サッカーアジアカップでベスト8に終わってしまった日本代表。それまで親善試合やW杯アジア二次予選で10連勝を飾り、FIFAランキングもアジア最高の17位に上昇しており、大手ブックメーカーの優勝オッズも出場国中唯一の2倍台だった。しかし、蓋を開けてみればグループリーグでイラクに敗れ、なんとか2位で決勝トーナメントに進み、ラウンド16でバーレーンに勝利したものの、イランに競り負けて準々決勝で、大会から姿を消すこととなった。
1−2で敗れたイラン戦に関して森保一監督は「相手のラフなロングボールをはじき返す部分でも、耐えながらわれわれの時間にしていくことができなかった」と振り返り、交代カードの切り方についても反省のコメントを出していた。敗因について細かい言及をすればキリはないが、本質的な問題は優勝候補の大本命と見られる中で、どうしてもアジアの大会を世界へのプロセスとして考えてしまう流れがあり、徹底して日本対策をしてくる相手に向き合って戦い切ることができなかった。
そこに関しては森保監督のマネジメントにも責任はある。ただ、監督が大きな枠を提示した上で、選手と対話しながら組み上げていく〝ボトムアップ型〟のチーム作りが、常に対策される側になるアジアカップではマイナスに働いてしまった側面もある。そして、こうしたチーム作りは2018年のハリルホジッチ元監督の解任から、西野朗前監督が短期間で選手の意見を汲み上げ、ロシアW杯でベスト16進出を果たす過程が、ある種の先鞭となった。その西野体制にコーチとして携わっていたのが現在の森保監督だったからだ。
結果が批判されても
「解任論」が出ない理由
アジアカップのベスト8敗退は国民を大きく失望させる結果となったが、日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は森保監督の進退については「(解任は)全く考えていません」と明言した。世間的にもアジアカップの内容や結果に批判的な声は上がっても、意外と「解任論」が湧き出てこない背景には現在の日本代表のチーム作りが大きく影響しているように思う。
プレミアリーグの強豪リバプールで活躍するキャプテンの遠藤航をはじめ、いわゆる海外組が大半を占め、スタメンにいたっては全員が海外組という試合も少なくない。普段は異なる戦術でプレーしている選手たちが集まって、短時間でチームとしてのビジョンを共有していくのが代表チームだ。
そこで監督が全ての戦い方を決めるのではなく、大方針は提示した上で、選手やコーチングスタッフを含めて議論しながら戦い方を固めて行くやり方はすっかり日本代表のカラーになってきている。元日本代表の名波浩コーチや前田遼一コーチも選手と近い距離でアイデアを投げかけ、選手の意見をフィードバックする橋渡しのような役割を担っていると考えられる。
そうした環境作りにおいて、森保監督ほどの適任は見当たらない。少なくともイメージしにくいのが実情なのだ。