仮に森保監督を代えるとなった場合、そのままの路線で適任者を探すのか、もしくはロシアW杯前から続けてきた日本代表のチーム作りを大きく転換させる必要が出てくる。Jリーグや海外のクラブ、あるいは代表チームで実績のある監督を就任させたから万事解決とはならないのだ。
長らく日本代表にはカラーがないと言われてきた中で、選手たちが主体となって作り上げる〝ボトムアップ型〟のチームというのが定着してきた。その環境作りにおいて森保監督が果たした役割の大きさについては疑う余地がない。しかし、徹底して日本を研究し、対策してくるような相手に向き合っていくにあたり、そうしたチーム作りが万能ではないという事実を突きつけられたのが、今回のアジアカップと言えるかもしれない。〝森保ジャパン〟を整理するために、少し時間を巻き戻そう。
なぜ日本サッカー史上初めて
W杯後も監督を続投したのか
森保一監督が率いた日本代表は2022年のカタールW杯をベスト16で終えた。当初の目標は「ベスト8以上」だったが、グループリーグでは優勝候補にもあげられていたドイツとスペインを破り、決勝トーナメントのクロアチア戦も1−1で延長戦も決着が付かず、PK戦で涙をのむ結末だった。そうした結果に値する評価も踏まえて、JFAは森保監督の続投を表明。アメリカ・メキシコ・カナダの3カ国開催となる2026年のW杯を目指す〝第二次・森保ジャパン〟がスタートすることとなった。
一人の監督がW杯を跨いで、日本代表を2サイクル率いるのは歴史上でも初めてのことだ。もちろん、そうした決断に批判的な声や懐疑的な声がある。かくいう筆者も全面支持というスタンスではないが、なぜ引き続き森保監督なのかを考えると、理解できることは多々ある。その大きな理由の1つが森保監督のキャラクターにある。
かつてサンフレッチェ広島を3度のリーグ優勝に導くなど、日本人の監督としては抜群の実績を持つ。しかし、現場で取材していると、森保監督ほどメディアやファンに対して、低姿勢で接してくる指導者はJリーグなどを見渡しても珍しい。
日本代表の練習では必ずといっていいほど、こちら側にも挨拶にやってきて、そこで小話をすることもある。そうした姿だけを見ていると、人として好感は持てても代表監督としての威圧感というのは感じられない。ただ、それこそが森保監督の強みでもあるのだ。
監督を端的に分類すると〝トップダウン型〟と〝ボトムアップ型〟がいる。前者は自分がこう戦いたいというのを決めて、選手たちに指示をしていくタイプ。後者は大枠の方向性は提示しながらも、選手たちの考えを尊重し、取り入れながら戦い方を築き上げていくタイプだ。もっとも大半の監督は〝トップダウン型〟と〝ボトムアップ型〟の両面を持っており、どっち寄りであるか分けることはできても100か0かという話にはならない。