2024年5月16日(木)

勝負の分かれ目

2024年3月6日

「聞く力がすごい」
ジュビロ横内監督の森保評

 しかし、森保監督は限りなく〝ボトムアップ型〟に振り切った指導者だ。戦術面も元々これといった型に固執することがなく、代表監督としても選手たちにとってどういうシステムがベストなのか、どういう組み合わせが効果的なのかを探りながらチーム作りを進めてきた。その過程で選手たちのアイデアも取り入れるし、試合で出た課題についても選手の気づきをフィードバックする形で、徐々にアップデートしていくのだ。

 観る側にとっても森保監督のサッカーはこれであるといった定義をしにくいのはそのためだ。もちろん現代サッカーの主流である素早い攻守の切り替えや縦に速くゴールを目指していくといった基本的な方向性はあるが、そのために具体的にどう選手たちが動いていくかの提示が、森保監督から一方的に指示されることはあまりないようだ。代わりに選手はもちろん、コーチングスタッフとのミーティングでも周りの意見や考えをまず聞いて、自分の考えを伝えることが多いという。

 そのことを教えてくれたのが、カタールW杯まで日本代表コーチとして森保監督を支えたジュビロ磐田の横内昭展監督だ。J2だった磐田を1年でJ1昇格に導いた注目の指揮官は森保監督について「聞く力がすごい」と語る。課題やテーマに対して、自分なりの答えを持っていたとしても、まずは相手の意見を聞いてから、自分の意見を投げ返すというのが森保監督の流儀なのだという。そして何か問題が生じれば、それまでの考えに固執することなく、解決策を見い出していく。横内監督は「彼ならきっと大丈夫」とここからに期待を寄せる。

 上から指示を出すのではなく、選手やスタッフを尊重しながら考えをまとめ上げていくのが森保監督の基本スタンスではあるが、カタールW杯で見せたように、本当に必要な時に、重大な決断ができる監督でもある。ここからW杯アジア二次予選の後半戦、そして最終予選とアジアの戦いが続く中で〝ボトムアップ型〟のチームに、必要な分だけ、自分から引っ張り上げていくリーダーシップを加えて行けるのか。ここから〝森保ジャパン〟のアップデートに期待して行くしかない。

   
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