2024年12月22日(日)

勝負の分かれ目

2023年7月13日

 7月1日のホーム札幌戦を最後に、5年間過ごしたヴィッセル神戸と日本に別れを告げたイニエスタに向けて、JリーグがYouTubeの公式チャンネルで、思い出の映像に添えて「ありがとうイニエスタ。ありがとう、イニエスタとJリーグの出会いに。ありがとう、イニエスタと歩んだ5年の日々」とメッセージを綴った。本当にイニエスタとの出会いはJリーグにとって決して忘れられない濃密なものだ。そして日本サッカーの成長にとっても大切な足跡として残り続けるだろう。

イニエスタがJリーグで見せたプレーの一つひとつが歴史として刻まれるのは間違いない(松尾/アフロスポーツ)

5年間見せ続けた世界レベルのプレー

 イニエスタがヴィッセル神戸の新加入選手として、日本にやってきたのは2018年。多くの報道陣を集めた加入会見で、イニエスタは謙虚に「自分にとって非常に重要なチャレンジです」と語った。4回の欧州チャンピオンズリーグ制覇や10年のワールドカップ優勝など、FCバルセロナやスペイン代表で多くの栄光を築いた正真正銘のスーパースターが、Jリーグでプレーするというインパクトは計り知れないものがある。しかし、5年という歳月を日本で過ごすことを想定していた人は多くないのではないか。

 イニエスタの影響を受けた最も身近な例で言えば、現在スコットランドのセルティックで活躍する日本代表FWの古橋亨梧らだ。神戸で一緒にプレーした選手たちはまるでイニエスタの魔法にかけられるように、芸術的なパスの受け手となるなど、クオリティーを一段も二段も引き上げられたことは間違いない。

 象徴的な出来事の1つが19年の天皇杯での優勝だった。同年にはJリーグ・ベストイレブンに輝いている。

 イニエスタと対戦する側のチームや選手にとっても、最初は何となくアンタッチャブルな存在だったかもしれない。しかし、ピッチ上ではイニエスタを止めないことには決定的なプレーをされてしまう。常に特別な存在ではあったが、厳しくボールを奪いに行ったり、時にはファウルで止めるといったシーンも普通になっていった。

 Jリーグにおいて、イニエスタとバチバチのバトルを繰り広げてきたのが、現在ヴィッセル神戸に所属するMF齊藤未月だ。イニエスタが来日した当時、湘南べルマーレの主力ボランチだった齊藤は果敢に挑み、激しいコンタクトにイニエスタが苦悶の表情を浮かべることもあった。ネット上などでは齊藤に対する非難の声が飛んだが、Jリーグとイニエスタの距離を縮める1つのエピソードになったようにも思う。

 齊藤はロシア(ルビン・カザン)での挑戦を終えて帰国した昨年の夏、ガンバ大阪に加入したが、奇遇にも、今シーズン神戸に加入。短い期間ではあるが、イニエスタとチームメートになった。

 それまでも対戦相手として、そのすごさを体感してきた齊藤だが、仲間として卓越した技術や感覚を目の当たりにして「本当にすごい選手だなと」と改めて感じると同時に、仲間であることの頼もしさも感じたようだ。


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