11月20日にサッカーのFIFAワールドカップ(W杯)が開幕し、カタールで国の威信をかけた熱戦が繰り広げられている。しかし、このW杯を選手、戦術、対戦カードに着目して観戦するだけではもったいない。
長年、サッカー日本代表を分析するスポーツジャーナリスト・河治良幸氏と連日マスメディアでウクライナ情勢を分かりやすく解説する安全保障専門家・高橋杉雄氏に、『Wedge』らしい独自の切り口でワールドカップについて語っていただいた。
(聞き手/構成・編集部 鈴木賢太郎)
長年、サッカー日本代表を分析するスポーツジャーナリスト・河治良幸氏と連日マスメディアでウクライナ情勢を分かりやすく解説する安全保障専門家・高橋杉雄氏に、『Wedge』らしい独自の切り口でワールドカップについて語っていただいた。
(聞き手/構成・編集部 鈴木賢太郎)
なぜ私たちは
「サッカー」を語るのか
編集部(以下、――) お二人はどういう形でサッカーに携わってこられたのか。
河治 私は1990年代に大学院で歴史学、中でも黒人奴隷に関する研究をしていたが、もともとスポーツ全体に関心があった。当時、日本代表にトルシエ監督が就任した時期で、メディアの論調は彼に批判的なものが多かった。次第に「メディアが伝えるトルシエは本当なのか」と疑問を抱くようになり、日本代表の試合を分析しサッカー掲示板への投稿を続けていた。そうしているうちにメディアの方々が〝発掘〟してくれ、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』の創刊に携わることになった。
ちょうど博士論文を書くかどうかというタイミングだったが、こうしてサッカーライターとしてのキャリアが始まり、この世界で生きていくことになった。
高橋 私は元々ライター志望だった。趣味がミリタリーとスポーツだったので、そのどちらかで「書く仕事」がしたかった。修士課程を修了するタイミングで就職活動を行い、新聞社も回っていたが、縁があって防衛研究所に入所することになり、結果的に軍事の世界で生きることになった。
サッカーに興味を持つようになったのは96年のアトランタ五輪の「マイアミの奇跡」がきっかけだ。日本代表が伊東輝悦選手のゴールでサッカー王国・ブラジルに1対0で勝利した試合を生中継で観戦し、そこからサッカーの魅力に引き込まれるようになった。