サッカー元日本代表の北澤豪氏は、現役時代に読売クラブ(現東京ヴェルディ)でJリーグ通算264試合に出場し、チームの黄金期を支えた。日本代表としても活躍し、国際Aマッチ59試合に出場した。2003年に現役を引退した後は、国際協力機構(JICA)のオフィシャルサポーターなどを務め、途上国を舞台に走り続けている。
11月17日には、さまざまなフィールドで活躍を見せる北澤氏の軌跡とビジョンを、ノンフィクション作家の平山譲氏が独占取材した『北澤豪のサッカーボールがつなぐ世界の旅』(報知新聞社)が発売された。発展途上国や貧困地域、紛争地帯を中心に数十カ国を訪れた北澤氏は、現地で何を感じたのか。
(聞き手/構成・編集部 鈴木賢太郎)
11月17日には、さまざまなフィールドで活躍を見せる北澤氏の軌跡とビジョンを、ノンフィクション作家の平山譲氏が独占取材した『北澤豪のサッカーボールがつなぐ世界の旅』(報知新聞社)が発売された。発展途上国や貧困地域、紛争地帯を中心に数十カ国を訪れた北澤氏は、現地で何を感じたのか。
(聞き手/構成・編集部 鈴木賢太郎)
「途上国」の実像に
〝アンバランスさ〟を感じた
世界の約3分の2が発展途上国である――。私たちは学校で単にこう教えられてきた。でも、幼少期からサッカーを通じて世界の国を知ることになった私は、アジアやアフリカ、中南米などに遠征に行くたびに、学校では学べない「途上国」の実像にアンバランスさを感じた。引退後はそうした国に再訪し、現地で何が起きており現地の人は何を考えているのか、自分の目と耳で確かめ、サッカーを通じてできる支援をしたいと考えていた。
「スポーツ選手は試合に集中すべきで、それ以外に余計ことはするべきではない」という意見を持つ人もいるが、こうした考えは誤りではないかと感じた出来事がある。
2002年、日韓ワールドカップ(W杯)出場のためデンマーク代表が来日した際、彼らから「キャンプ地との交流を図りたい」「地域の人と接点を持たせてくれないか」と申し出があった。親戚に身体障害者がいるエースのトマソン選手は「障害者の方を集めて交流させてほしい」と話していた。
日本人的な感覚だと、地元側から「デンマーク代表のスター選手と交流したい」と働きかけるが、彼らの発想は逆だった。自分たちが持つ影響力を生かし、地域に還元するための活動を積極的に行っていたのである。
デンマーク代表に限らず、海外のチームがこうした社会貢献活動をしていることは聞いていたが、日本でその実態を目の当たりにしたとき、今まで自分が感じていた日本代表としての「誇り」以上の「使命」を果たさなければならないと思い、「国を代表するような選手はこうでなければいけない」と考え直した。