また、私にはその国の経済を直接的に変える力はないが、スポーツの力で途上国の発展を後押しができると感じた。スポーツを通じて「人づくり」を行うことは、その国の発展に資する人材の育成にもつながるし、何よりスポーツは国民を元気にすることができる。競技が盛り上がれば、回り回って地域社会を盛り上げることも経済を潤すことも可能である。
「途上国支援」というと、経済的な支援やインフラ整備が頭に思い浮かぶ人が多いと思う。しかし、途上国の「国づくり」に貢献するという意味では、現地に橋を架けることとサッカーを通じた人づくりを行うことは〝同等の価値〟を持つのではないか。私はインフラ整備の専門家ではなくサッカーの専門家だからこそ、これからもサッカーを通じて自分にできる役割を果たしていきたい。
11月20日にカタールワールドカップ(W杯)が開幕するが、今回の大会は個人的に特別な思いがある。W杯初出場を後一歩のところで逃した「ドーハの悲劇」の舞台・カタールが開催国だからだ。さらに、「ドーハの悲劇」の戦友であり同学年の森保一監督が日本代表を率いる大会でもある。森保監督に思いを託し、因縁の地で行われるW杯が日本サッカー史に残るような大躍進を遂げる大会になることを期待したい。
平成の時代から続く慢性的な不況に追い打ちをかけたコロナ禍……。 国民全体が「我慢」を強いられ、やり場のない「不安」を抱えてきた。 そうした日々から解放され、感動をもたらす不思議な力が、スポーツにはある。 中でもサッカー界にとって今年は節目の年だ。 30年の歴史を紡いだJリーグ、日本中を熱気に包んだ20年前のW杯日韓大会、 そしていよいよ、カタールで国の威信をかけた戦いが始まる。 ボール一つで、世界のどこでも、誰とでも──。 サッカーを通じて、日本に漂う閉塞感を打開するヒントを探る。