2026年3月4日(水)

Wedge OPINION

2026年3月4日

 日本では近年、外国からの偽情報拡散を含む情報操作への対応が「政府全体」で急速に進められている。背景には、AI技術の進展により、偽情報の拡散が量・質ともに高度化し、ボットネットや偽アカウント群の展開が容易になったことがある。外国勢力による選挙干渉や世論形成への介入など、いわゆる影響工作への警戒感が政府を中心に高まっているのだ。

2025年1月20日に「政府による検閲」を終わらせる大統領令に署名した(REUTERS/AFLO)

 こうした問題意識と連動して高市早苗政権が重視しているのが、インテリジェンス改革である。自民党と日本維新の会が交わした連立政権合意書には、内閣情報調査室および内閣情報官の格上げ、情報要員の育成などが掲げられた。偽情報対策もこの流れの中で一層強化されるとみられる。政府は国家安全保障戦略など安保関連3文書の前倒し改定に向け調整に入っており、この中で偽情報対策をどのように位置づけ直すのかも注目される。

 国際的には、この10年で欧米など西側諸国を中心に偽情報対策が整備されてきたが、米国では、第2次トランプ政権の誕生で状況が一変した。トランプ政権は偽情報対策を「検閲」だと批判し、偽情報対策に関連する政府機関は解体され、関連組織の活動が停止・縮小に追い込まれた。

 象徴的なのが、2025年12月に公表された新たな国家安全保障戦略(NSS)である。バイデン前政権が取り組んできた偽情報や外国からの情報操作は、国家安全保障上の主要課題から外され、「アメリカ・ファースト」政策の一環として米市民の「言論の自由」確保が強調され、「検閲」(=偽情報対策)に反対する姿勢が鮮明に打ち出された。

 このNSSの主張は大きく3点に整理できる。第一に「言論の自由」を最優先事項と位置付けること、第二に外国からのプロパガンダや影響工作が米国の政策決定や経済を混乱させうる場合には防止する必要があること、第三に欧州連合(EU)など同盟国・同志国が行う「検閲」(=偽情報対策)に反対することである。この結果、政権運営や米経済の利益に反する敵対的な活動だけが問題視されることとなった。


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