Jリーグはさらなる成長を遂げられるか
川崎フロンターレの司令塔として活躍する大島僚太らも憧れの選手として名前をあげるイニエスタは、現役のJリーガーだけでなく、日本のサッカーファン、そしてもちろん未来を担うサッカー少年たちにも大きな影響を与えたと考えられる。来日してしばらくは〝イニエスタ・フィーバー〟が起こり、神戸のホームゲームはもちろん、アウェーゲームにもイニエスタ見たさに多くのサッカーファンが詰めかけた。
その中の何人がJリーグのファンとして定着したかは分からないが、それまで主に海外サッカーや代表戦にしか関心が向かなかった層をJリーグに招き入れた功績は大きいだろう。だが、それ以上に、サッカー選手を目指す少年たちの身近なお手本であり続けたことで、大きな影響をもたらしたはずだ。
そしてイニエスタに影響を受けた選手たちが、後世に伝えていく側になって行く。それは選手だけでなく、間近にそのプレーを目に焼き付けたファンも同じだ。
開幕30周年を迎えたJリーグは年々成長し、その環境で育った多くの選手たちが海外で活躍するのが当たり前になってきている。しかし、イニエスタのような世界的なスーパースターをJリーグのクラブが獲得することは、今後なかなか難しいかもしれない。
それでも、さらに魅力的なリーグとして国際的に認められて、高められていった先に、Jリーグが世界的なスーパースターの移籍先の選択肢に入ってくる時が来るかもしれない。その時に、イニエスタがJリーグにいた5年間のことが、改めて語り草になるだろう。
ただ、イニエスタは別れの挨拶で、これが永遠の別れでないことも強調していた。選手という立場でなくても、また日本に来て、ファンやサッカー少年たちに大事なことを伝えてくれるはず。その時に、お世辞ではなく「成長したね」と言われるJリーグと日本サッカーでありたい。(文中敬称略)