2024年7月16日(火)

プーチンのロシア

2023年5月16日

 象徴的な出来事もあった。ロシアは4月下旬に、自国が議長を務める国連安全保障理事会において、「国連憲章の擁護」をテーマにした会合を開催し、自国の立場を正当化する主張を展開してみせた。ここではロシアと連携する中国が対米批判を展開したほか、ガーナ、ガボン、モザンビークはロシアによるウクライナ侵攻に言及しなかった。

 アフリカは国連総会の場では54票を有するなど存在感が高く、中国やインドなども出席する国連の場では、ロシアは国際社会から孤立しているとのイメージを抑えることができる。

G7側も対抗

 ただ、このような現状をG7側も十分に理解している。米国のバイデン政権は今年に入り、ブリンケン国務長官やハリス副大統領らを相次ぎアフリカに派遣したほか、3月に主催した「民主主義サミット」では約120カ国・地域を招待し、アフリカ5カ国を新たに加えた。日本も、岸田文雄首相が4月末からアフリカ4カ国を歴訪するなど、議長国としてアフリカとの連携を強化している。

 アフリカ諸国に対しては、ロシアと連携する中国も浸透を強めており、欧米や日本がアフリカでどこまで巻き返せるかは不透明な部分がある。ただ、ロシアは実際にはアフリカ全体との貿易額では欧州連合(EU)の20分の1程度しかなく、対アフリカの直接投資にいたっては1%しか占めないほか、ワグネルが入った国々では逆に暴力が過激化している実態も伝えられており、その関与が各国の発展につながっているかは強い疑問がある。

 ウクライナ侵攻でロシアが今後さらに劣勢に陥れば、ロシアを見限るアフリカ諸国が今後増加する可能性もある。

 
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 ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
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