2024年12月11日(水)

プーチンのロシア

2023年4月19日

 ウクライナ危機で先鋭化した米国とロシアの対立が、冷戦期を彷彿とさせる様相を呈している。3月にはソ連崩壊後初めて、ロシアで活動していた米主要紙の記者がスパイ容疑で逮捕され、4月に外国大使らが出席して行われた信任状奉呈式で、プーチン大統領は米大使に「ウクライナ危機は米国が原因だ」と突きつけた。

(代表撮影/AP/アフロ)

 侵攻開始から2年目を迎えても戦況が打開できず、無謀な戦略で自軍の人的損害が増え続けるなか、プーチン政権は苦境の理由を米国に押し付けて、国民の目を外に向けるほかはない。ウクライナ危機の長期化が確実視されるなか、両国間の対立は今後も悪化の一途をたどることが確実だ。

狼狽したプーチン氏

 「私はこの儀式の前向きな雰囲気を壊したくはない。そしてあなたは私の意見に同意しないだろう。しかし大使、あなたの国が2014年のウクライナをはじめとした各国の〝カラー革命〟を扇動したことが、結果として現在のウクライナ危機を招き、ロシア・米国関係の悪化を引き起こしたのだ」

 4月5日、クレムリンで新たに任命された各国の駐ロシア大使たちを前に演説したプーチン氏は、新任のトレーシー米国大使に対しこう言い放った。トレーシー氏は憮然とした表情を浮かべながら、じっとプーチン氏の顔を見つめていた。

 プーチン氏はギニア大使には「ロシアとギニアは伝統的に親密な関係にある。ロシアは主要投資国でもある」などと語りかけ、赤道ギニア、ジンバブエ大使には「7月にはサンクトペテルブルクで第二回アフリカフォーラムが行われる」などと呼び掛けるなど、他国の大使にはそれぞれ好意的に言及した。各国の大使の面前で、米大使を辱める意図が鮮明だった。

 ただ、ここで異変が起きた。プーチン氏が演説を終えても、参加した大使らは誰一人として拍手を送らず、プーチン氏が逆に狼狽する様子が全世界に映像で配信された。ロシアの孤立がむしろ鮮明になった。


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