今年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、非常に重要なG7となったといえる。特にゼレンスキー大統領が対面参加したことで、対ロシアでのG7の結束は強く確認された。またG7で唯一、アジアに位置する日本が議長だったことで、インド太平洋地域から多くのゲスト国を招くことができ、対中国を念頭に置いた連携にも一定の成果が見られた。
そして、偶然にも、米国のバイデン大統領が南太平洋、豪州訪問を取りやめたことで、日米豪印4カ国の枠組みであるQUAD(クアッド)サミットも開かれた。対ロシア、対中国を念頭においたグローバルサウスへの説得工作でも成果があった。
日本は、過去、グローバルサウス各国を植民地支配したことがほとんどないため、他の国が主催するG7よりも有利な条件で話を進めることができたのである。つまり、日本が議長国になって狙った、対ロシア、対中国、グローバルサウス説得の3つすべてで、G7サミットは成果の多い成功例であった。
ただ、忘れてはいけないもう一つの国がある。2019年以来5年連続で、G7に招待され続けているゲスト国のインドだ。今やG7の「準会員」状態になっている。
今回のG7サミットでは特に存在感を示したといえる。そこで、本稿では、今回のG7サミットの3つの主要トピック、対ロシア、対中国、グローバルサウス説得の3つの観点から、インドが、どのような存在感を示したのか、それはどう今後につながるのか、分析することにした。
モディ―ゼンレンスキー会談の意味
まず、対ロシアという観点からいうと、モディ―ゼレンスキー会談は、非常に大きな成果だったといえる。22年2月のロシアのウクライナ侵攻以来、インドは中立の政策を採用してきたが、実際には、かなりロシア寄りの国とみられてきた。
ロシアによる侵攻を非難しない姿勢や、ロシアからの原油輸入を増やしていることが背景にある。実際には、インドが輸入した原油は、ヨーロッパに再輸出されている。ロシアから安く仕入れ、まともな価格でヨーロッパに売れば、その差額で儲かるからだ。
だから、顧客はロシアから原油輸入できなくなったヨーロッパ諸国であり、しかも、安く買いたたかれたロシアの収入は大幅に減っている。だが、ロシアに一定額の資金が流れるのは事実で、インドの姿勢は、対ロシア制裁の効果を抑えてしまうとの批判も受けてきた。
こういった政策は日印関係にとって、大きな問題だったと言える。米ソ冷戦時代、特に1970年代以降、インドは非同盟を掲げていたが、事実上、ソ連の同盟国であった。その結果、米国側の日本と、ソ連側のインドの関係は、あまり進展しなかったのである。今は、中国対策におけるインドとの連携の重要性は理解されているものの、インドとロシアのつながりは、日印関係を停滞させ得る危険性がある。