2024年6月21日(金)

インドから見た世界のリアル

2023年5月25日

 このロシア寄りのイメージを改善させたのが、2022年9月のモディ首相とプーチン大統領の会談である。モディ首相がプーチン大統領に「今は戦争の時代ではない」と直接伝えたのだ。インドは、ロシアへの配慮は維持しつつも、戦争そのものには反対だ、という中立の姿勢を内外にアピールする効果を持った。

 今年、インドは、再びロシア寄りのイメージを変える必要がある。それはG20の議長国だからだ。9月にサミットを開く。

 G20は、G7とその他13カ国・地域が集まり、そこにはロシアが含まれている。だから、そのまま開催すれば、ウクライナは招待されず、ロシアだけが参加する。それは中立とは言えない。

 G20に参加するG7各国としても、相手がインドだと、欠席するわけにもいかない。でもゼレンスキー大統領が来ないのに、プーチン大統領だけと対面で会ってしまうのも、困る。議長国インドには、なんとかこの状況を打開してほしいのが本音だ。

 だからインドは、ゲスト国としてウクライナを招待する可能性がある。ただ、招待するには事前の準備が必要だ。実際に1度は対面で会っておきたい。

 昨年G20の議長国だったインドネシアのジョコ大統領は、モスクワとキーウ両方を訪問し、両方の首脳を招待した。だから、モディ首相も、ロシアとウクライナ、両方と調整する必要がある。

 インドは今年、上海協力機構の議長国でもあり、7月にインドでサミットを開く。だからプーチン大統領と会う機会はある。だとすると、中立であるためにはゼレンスキー大統領に会う必要がある。

 今回のG7にゼレンスキー大統領が広島を訪問したのは、完璧な機会だった。モディ首相は対面でゼレンスキー大統領に会うことができたのである。

 G20に向けて、インドはロシア側の国ではなく、中立の国として、両方の首脳と対面で会談した、という実績になるわけである。これがG20へのゼレンスキー大統領の出席につながれば、G7各国としても安心してG20に出席できる。インドとG7各国、双方にとって安心材料だ。

 いずれ、両国が停戦に向けて話す機会があれば、このような両方の首脳と対面で会ったという実績はプラスになるだろう。その点で、今回のモディーゼレンスキー会談は、非常に意味があるものだった。

インド太平洋の存在感を高めた

 インドがG7に参加したことは、インド太平洋にとっても有益であった。日本は、G7で唯一のアジアの国だ。だから、ロシア対策も必要であるが、中国対策について話をしたい。だからこそ、今年、日本が議長国のG7においては、インド太平洋各国をゲスト国に選んだのである。

 ゲスト国8カ国(ウクライナを除く)の内、ブラジルとコモロ諸島以外、インド、豪州、ベトナム、インドネシア、韓国、クック諸島の6カ国は、みな、インド太平洋の国々だ。日本が、インド太平洋の意見をG7に反映させようとしたことがわかる布陣だ。

 実際、これらのゲスト国は、9つのセッションの内の3つのセッション、「複合的危機への連携した対応」「持続可能な世界に向けた共通の努力」「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」に参加し、インド太平洋諸国の意見を直に議論へ反映させた。

 特にインドの存在は重要だ。そもそも安倍晋三元首相が、「アジア太平洋」にかわり、「インド太平洋」という考え方を紹介したのは、インドを仲間に入れたかったからである。インドなしでは、インド太平洋の話をしたことにならない。

 しかも、QUADサミットまで開かれた。QUADサミットは、過去2年半の間に5回目のサミットであるから、頻繁である。しかし、今回は特に2つの点で大きな進展があったといえる。


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