「ヨーロッパ諸国は、ヨーロッパの問題は世界の問題だが、世界の問題はヨーロッパの問題ではないという姿勢から脱却しなければならない」と述べたのである。これは、ロシアのウクライナ侵略を受け、ロシアに制裁を課した結果、ロシアからの穀物やエネルギーの輸出が止まり、価格が上昇、結果として、グローバルサウス各国の中で食糧やエネルギーを十分買えない国が出てきた。
食糧やエネルギーは生活の必需品で、十分手に入らなければ、死者が出る可能性のある安全保障問題だ。貧しい国にとっては深刻なのである。インドは、そういった国々の意見についてG7なども配慮するよう求めたのである。
実際、今回のG7では、日本がグローバルサウスへ配慮するにはどうしたらいいか、具体的に食糧やエネルギーの供給体制について検討した。そして、「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発出している。
インドが掲げた声は、日本を通じて、そして他のG7各国やゲスト国と共に、実現に向けて踏み出したのである。これは日本とインド双方にとって成果だ。
日本にとっても世界にとっても重要な存在に
こうしてみると、今回のG7広島サミットは、日本にとって大きな成果であっただけでなく、インドにとっても成果であった。インドは、モディーゼレンスキー会談によって、対ロシア政策における中立を再確認し、他のインド太平洋各国とG7とQUADに参加して対中国戦略の進展ももたらした。そして、グローバルサウス対策を進め、9月のG20対策も行ったのである。
かつてインドは、南アジアに限定された大国であった。しかし今、世界の大国としての戦略を模索し、一歩一歩、世界での付き合い方を学んでいる。まだ完璧と呼ぶには、程遠い側面もあるが、日本にとっても、世界にとっても、重要な存在になっていくことは、間違いないところだろう。