5月19~21日に広島市で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)、その後、24日にはシドニーで日米豪印4カ国の枠組みであるQUAD(クアッド)サミットが開かれ、9月の20カ国・地域(G20)サミットでも岸田文雄首相がモディ首相に会って話をする機会がある。岸田首相は3月にも訪印しているから、とても頻繁に会っており、日印関係の専門家の間でも注目されている。
ただ、日本であまり注目されていない側面もある。インドが今年、上海協力機構の議長国でもあることだ。すでに国家安全保障局長級の会談、国防大臣級の会談、そして外務大臣級の会談が実施された。7月には、上海協力機構のサミットが開かれる。
インドはQUADやインド太平洋などで日米などとの連携を深めている。それなのに、なぜ、上海協力機構のメンバーなのだろうか。そこには、どのような国益があるのだろうか。本稿でまとめておくことにした。
パキスタン対策としての上海協力機構
インドにとって、上海協力機構は、安全保障面でとても役立つ潜在性がある。インドにとって安全保障面の課題は、中国とパキスタンに対応することだ。特にパキスタンは、イスラム過激派をインドに送り込んでくる。
パキスタンは、1971年の印パ戦争に敗れ、インドとの間で大きな力の差を認識させられた。それ以降、インド対策として、核兵器を開発するとともに、今まで以上に活発に、インドに対してテロ活動を行うイスラム過激派などを支援する戦略をとった。いわゆる「千の傷戦略」で、どんな強い国も、テロによって小さな傷を千回つければ、弱くなるという戦略である。
1980年代、ソ連がアフガニスタンに侵攻し、米国はパキスタンを経由して、ソ連に対するゲリラを支援した。パキスタンは、その過程で、テロリストを支援する方法のノウハウを高めていった。
世界中からソ連と戦う義勇兵が集まるようになり、その中にはイスラム過激派も含まれた。後に9.11同時多発テロを首謀したオサマ・ビン・ラディンもいた。
そういったイスラム過激派との人脈もつくり、パキスタンは、テロ支援に自信を深めていったのである。そして、89年にソ連がアフガニスタンから撤退すると、パキスタンは連携するイスラム過激派をインドに送り込む作戦を考え始めたのである。だから、インドはパキスタンが支援するイスラム過激派のテロに悩まされるようになった。そして、テロ対策として、ロシアや中央アジア各国が保有するイスラム過激派の情報が必要になっていったのである。