2024年12月4日(水)

インドから見た世界のリアル

2023年4月23日

 2023年4月13日から、インドで、日米印の空軍共同演習「コープ・インディア23」が始まった。米国からは日本も保有するF-15戦闘機と巨大なB-1爆撃機、インド側からは、参加できそうな最新機種が勢ぞろいで参加する。ロシア製、フランス製、国産、英国製の各種戦闘機の他、給油機や早期警戒管制機も参加しているのだ。

インドに派遣されたのと同型のB-1爆撃機(中央の大型機2機、dvids)

 そして、今回の目玉は、日本のオブザーバー参加である。「コープ・インディア」はもともと米印の共同演習で、日本が参加するには初めてだ。実は、筆者も、インド国防省に呼ばれ、国防相参加の会議で、統合国防長(統合幕僚長にあたる)と一緒のセッションで、直接プレゼンする機会を頂いた

 本稿では、そこでの経験も踏まえ、この演習がどのような意味を持つのか、日本にとってどのように関係するものなのか、分析する。

この演習が持つ意味

 今回の演習の特徴は、演習が行われる基地と、派遣されている武器をみるとわかる。演習が行われるのは、インドの西ベンガル州にある、カライクンダ基地である。この基地は、第2次世界大戦中、B-29爆撃機が展開し、中国大陸の満州(現在の中国東北部)まで含め、現地の日本軍を爆撃した基地である。

 この基地に、今回、米国は、長距離飛べる大型戦闘機であるF-15戦闘機と、射程の長い巡航ミサイルを搭載して長距離爆撃できるB-1爆撃機を派遣した。つまり、今回の演習は、インドから中国を爆撃することができる場所に爆撃機を展開したものである。

 これは、中国にとっては、大きなプレッシャーだ。米国は、今、B-1爆撃機には、核兵器は搭載しない。だから通常弾頭で、核兵器による脅しではない。しかし、印中国境においては、巡航ミサイルは非常に有効な手段だ。なぜかというと、印中国境のチベット側は険しい山岳地帯であることと関係がある。

 インドに向け侵攻する中国軍の補給線は、その山岳部の間を通る道路に依存している。山岳部なので、トンネルや橋などでつながっているから、もし、巡航ミサイルで、トンネルの出入口や橋などを攻撃したら、中国軍の補給線は途絶える。

 しかも、中国軍の空軍力にとっても、巡航ミサイルは脅威である。インドと中国の国境では、中国側の標高の方がはるかに高い。標高が高いということは、揚力を得られ難い。


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