2022年9月27日(火)

インドから見た世界のリアル

2022年9月11日

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長尾 賢 (ながお・さとる)

米ハドソン研究所 研究員

学習院大学大学院にて博士号(政治学)取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員などを経て2017年から現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員、スリランカ国家安全保障研究所上級研究員、未来工学研究所特別研究員なども兼任。著書に『検証 インドの軍事戦略』(ミネルヴァ書房)。

 8月後半、印中、印パ国境を訪問する貴重な機会を得た。そこで、印中の軍事的緊張が急速に高まっていること、現地で米国軍の存在感が高まりつつあること、そして、日本が国益上どうしたらいいか、実際に感じることができた。本稿は、現地で得てきた感触をまとめたものである。

印中の軍事的緊張が続いている国境地帯のパンゴン湖(筆者撮影、以下同)

緊張高まる極寒の地

 印中国境は、標高が5000メートル、冬はマイナス30度になる過酷な地域である。人もあまり住んでいない。だから、2020年冬の段階まで、印中両軍が共に冬は暖かい地域へ後退し、警備を厳しくしていなかった場所がある。現在のインドのラダクにある一部地域は、まさにそういった場所であった。

 しかし、20年冬、中国軍は、そのラダクで侵入を開始し、冬の間に陣地を構築した。そして、春になって、インド軍が戻ってきてみると、中国軍はインド側に深く入り込んでいたのである。20年6月には、両軍が1000人規模の乱闘になったが、中国側は釘の出た鉄のロッドなどを多数準備しており、インド側だけで100人近い死傷者を出した。

 その後、両軍は大規模に展開を続け、緊張は高まったままだ。21年2月には、両国の合意が成立し、侵入したラダクの一部、パンゴン湖から中国軍が少し後退した。後退した部隊は、主力戦車だけで200両もいる中国の大部隊であった。21年2月以後、緊張は少し緩和されたが、その後も、両軍は大規模展開したまま、現在に至る。

 今回、筆者は、デリーを経由して、空路、ラダクに入った。そして、最大都市レー、パンゴン湖などを訪れてきたのである。

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