2024年4月18日(木)

インドから見た世界のリアル

2022年9月11日

日本はどうすべきか

 このような情勢を元に、日本の国益の観点から、日本はどうすべきだろうか。印中国境の情勢は、日本の安全保障に大きくかかわり始めているといっていい。

 中国が日本向けに配備していた兵器を、印中国境に再展開し始めているからだ。印中国境のインド側防備が強くなればなるほど、中国が日本向けに準備していた予算や軍備を、インド向けに再展開させていくだろう。日本の安全保障に資する動きだ。

 しかも、今、米国は印中国境を重視し始めており、米国からも、印中国境における、日本の貢献を求めてくるかもしれない。だとすれば、いわれてやるよりは、自分からやった方がいい。

 日本は、インドの国境地域における国防力強化に協力する方がいいだろう。印中国境のインド側の防備の弱点は、そのインフラにある。道路網を整える必要がある。

 すでに、印中国境の東側、インド北東部では2014年以降、日本はインド側のインフラ整備を支援している。印中国境の西側、ラダクでもインドのインフラ整備を支援してもいいのではないか。

 ただ、日本側にも制約がある。インフラ建設要員がラダクに行って、道路建設に直接従事することには、日本国内の反対もあるかもしれない。

 使えるのは絶景だ。美しい自然を見に行くために、道路がいる。道路建設には重機がいる。筆者も、日本製の重機がすでにラダクの印中国境地帯で、道路建設に従事している姿を確認した。もっと数が増えてもいいはずだ。

パンゴン湖へ向け道路建設を行う日本製重機

 そこで、ラダクの観光開発を名目に、インドに工事用の重機を多数提供するのはどうだろうか。観光客が移動するための道路を作って、その道路を軍隊も利用したとしても、別に「軍事目的」と強調しなくていい支援になる。印中国境の防衛は、美しい絶景を見に行くことを名目に、強くできるはずだ。

 もう一つは水だ。ラダクで軍を展開させるには、飲み水が十分ないといけない。しかし、水源であるヒマラヤの氷河は消えつつある。しかもラダクに流れてきた水は、ちゃんと貯めなければ、どんどん下流に流れていってしまう。

 そこで、緑地化事業が必要だ。木があれば、水を貯めやすくなる。一定数になると、森は雨を呼ぶ。だから有用だ。実際、ダライ・ラマは緑地化を呼びかけ、一部地域では緑地化事業が行われていた。日本として支援してもいい。

一部では緑地化事業が進められている

 問題は、現地の建物が大量の降雨に耐えるようにできていない点だ。緑地化に際しては優秀な専門家がちゃんと科学的に計算する必要があるだろう。緑地化によって現地の家々を壊してしまっては、いけないからだ。

 印中国境に行って見て、現地を見て、得るものが多かった。日本人は、ぜひラダクの絶景を見て、それを楽しみながら、日本の安全保障について考えるのがいいと思う。

 
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