今年、日本で日米豪印のクアッド(Quad)首脳会談が予定されている。対中国を念頭に置いた日米豪印の協力枠組みである。しかし、今、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、このクアッドの枠組みが揺れ動いている。ロシアに対して強い態度をとる日米豪に比べ、インドはロシアの友好国で、ロシアに配慮し、対ロシア制裁に協力しないからだ。
このような姿勢の一因には、インド軍が、ロシア製の武器に依存していることがある。武器はハイテク製品なのに乱暴に扱うため、常に修理が必要で、インドはロシアからの修理部品の供給に依存しているからだ(参照「ロシアを非難する国連決議にインドが棄権した理由」)。
今後、クアッドの協力を継続していくには、インド軍のロシアへの依存度を下げていくことが望ましい。具体的には、インド軍に武器を供給することだ。
今回は、具体策として、日本がインドにCH-47輸送ヘリをリースすることを提案したい。そこには、どのような利点や課題があるのか。どのような将来性があるのか、検討してみる。
3つの大きな利点
CH-47輸送ヘリとは、二つローターがある大型の輸送ヘリコプターのことである。陸上自衛隊と航空自衛隊に約70機配備されており、災害派遣などで活躍することが多い。大変有用な装備である。
実は、日本ではCH-47輸送ヘリは、ちょうど更新期を迎えている。1984年から配備され始めたため、20年以上使った機体が出ているのだ。新しい機体を購入すれば、古い機体はいらなくなる。
ただ、古い機体といっても、あまり古くないのが実態だ。日本では整備を厳しく行ってきたため、使おうと思えばもっと長く使える。このCH-47輸送ヘリを格安、または無料でリースし、他の国で使ってもらうことが可能なのである。そこで、インドへのリースが候補になる。
実は、この武器は、インドで強いニーズがある。今、インドと中国の国境では、中国軍がインド側に侵入したままの状態である。中国軍は、最新の武器を大規模に展開し、インドに圧力をかけている。
そのためインドも、印中国境の防衛のために軍の大規模展開を進めている。特に、中国から侵略を受けた際に反撃に出る部隊、インド陸軍第17軍団を創設したことは大きい。しかし、印中国境は山岳部だ。だからヘリコプターによる移動が有用なのである。