2022年7月7日(木)

インドから見た世界のリアル

2022年4月6日

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長尾 賢 (ながお・さとる)

米ハドソン研究所 研究員

学習院大学大学院にて博士号(政治学)取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員などを経て2017年から現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員、スリランカ国家安全保障研究所上級研究員、未来工学研究所特別研究員なども兼任。著書に『検証 インドの軍事戦略』(ミネルヴァ書房)。

 日本がインドにリースした中古のCH-47輸送ヘリは20年たっているものがあるから、そろそろ更新期だ。つまり、インドに代わり、日本が米国からCH-47輸送ヘリの新品を購入すればいい。米国が損をすることはないのである。

CH-47にとどまらない将来性

 このように、CH-47輸送ヘリをインドにリースすることには利点があり、課題も克服することができる可能性が高い。だからやるべきである。もし成功すれば、それは他の武器輸出案件のモデルになるだろう。

 まず、インドだけでなく、ベトナムなど、ロシアの影響力が強い他の国にもCH-47をリースするモデルになり得る。

 また、例えば、日本で退役するP-3C対潜哨戒機も、インドにリースしていい装備だ。日本はかつて100機近いP-3Cを保有してきたが、だんだん退役しつつある。でも、日本の整備状況はよく、まだ使える。リースできる。

 インドは米国から、P-8対潜哨戒機の新品を輸入している。しかし、P-8は、いいレーダーを積んでいるから、潜水艦だけではなく、陸上部隊でも探知できる。そこで、インド軍は、本来は、潜水艦を探知するために配備した、海軍のP-8対潜哨戒機を、印中国境の山岳部に移動させて、中国軍の探知に使用している。結果、インド海軍が潜水艦探知に使用するための哨戒機は、山岳部に展開してしまっているのである。

 そこで、日本のP-3Cをインドにリースして、対潜水艦探知の任務に使ってはどうか。これも格安なら、インドにメリットがあるだろう。日本にとっても、退役して行き場を失ってしまう装備を、有用に活用できる。

 CH-47輸送ヘリの時と同じように、米国製の装備なので、米国とよく協議する必要がある。もしCH-47輸送ヘリの交渉でうまくいっているならば、P-3Cでも同じように調整することができるだろう。

 他にもいろいろできることはあるだろう。インドは今、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシア製戦闘機、戦車の部品の内、100以上の部品について、ロシアから輸入することを禁止し、国産製品に変えることにした。もしそうなら、それに協力する手もある。

 ロシア製の戦車の装置を日本製に変えて、ロシア製部品の影響力を落とすこともできるはずだ。そういった改造パーツを作るのが上手で、インド軍に多くの改造パーツを納入しているイスラエルと連携すれば、日本製部品をロシア製の武器に搭載することができる。

 もしCH-47輸送ヘリや、P-3C対潜哨戒機のリースの際に、国際交渉力が高まってくれば、インドにおけるロシアの影響力を下げるのに、日本とイスラエルが協力するといった応用編も可能になるだろう。

 ロシアのウクライナ侵攻は、インドにおけるロシアの影響力を、日米豪に見せつけた。それは武器輸出を通じたロシアの不断の努力の結果、起きたことである。だとすれば、日本もこれから不断の努力をもって、ロシアの影響力を切り崩し、日本の仲間を増やしていく必要がある。それが、長い目で見て、中国、ロシア、北朝鮮の脅威に同時に直面する日本の戦略として、適切なものといえよう。

 
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