2024年11月22日(金)

インドから見た世界のリアル

2023年4月23日

 今年、インドは、主要20カ国(G20)の議長国であるだけでなく、上海協力機構の議長国でもある。その関連イベントとして、3月末に、日本で言えば国家安全保障局長レベルの会談を、上海協力機構の枠組みで行った。議長国であるインドで行う会議に、中国とパキスタンから国家安全保障局長級の参加者がいくことになるはずだった。

 だが、インドは強い態度を保ったままだ。中国とパキスタンの国家安全保障局長級の参加者はインドに入国できず、オンライン参加となったのである。

重要度を増す日本の存在

 このような状態で、米国の爆撃機が参加する共同演習が、インドで行われ、日本がオブザーバー参加した。これは意義深いことだ。なぜなら、日本にとっても、この演習は重要なものだからだ。

 そもそも、日本は今、台湾有事をはじめ、中国の脅威に直面している。次の5年間で防衛費を56%上げる。それでも、中国の潤沢な資金に比べれば少ない。

 もし中国が全力を日本に差し向けてくるならば、北東アジアのミリタリーバランスは中国に大きく傾く。台湾有事の抑止に失敗し、戦争が起きてしまう可能性が高まることになる。

 しかし、もしインドと協力し、中国軍が印中国境で予算や部隊を使うならば、日本にとっては救いだ。米国やインドが多くのミサイルを印中国境に配備することは、日本としては国益にかなうのである。

 23年4月に日本で行われた、主要7カ国(G7)外相会談のインド太平洋セッションは、「インドとの協力が重要であることを強調」した。「インド」という国名が明確に出るのは異例だ。

 今年1月に日本で行われた日印戦闘機共同演習も、次回はインドで行われるかもしれない。印中国境は関係してくるだろう。2月、3月と、インド陸軍も来日して共同演習を実施している。

 3月に岸田文雄首相が訪印した時には、新しい枠組みである「政府安全保障支援(OSA)」の枠組みで、将来、インドに対して支援することも明記した。すでに行われているインド北東部だけでなく、印中国境のインフラ支援なども課題になるだろう。

 日本は、米国、豪州、そしてインドと連携し、印中国境情勢を戦略に組み入れて、日本の防衛を強化する時代に入ったのである。

 
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