インドに比べ、中国の戦闘機は、標高の高いところにある空軍基地から飛び立つので、揚力が得られ難いから、燃料や弾薬を大幅に減らして、戦闘機を飛ばす。そうすると、出撃した中国の戦闘機は、すぐに燃料や弾薬を使い果たしてしまうから、すぐ空軍基地に帰ることになる。もし、インドや米国が巡航ミサイルで中国空軍の基地を集中的に攻撃すると、中国の戦闘機は離着陸できなくなり、燃料や弾薬を使い果たして、役に立たなくなってしまうのである。
だから、今回の米軍の爆撃機だけでなく、インドは、超音速巡航ミサイルをはじめ、各種ミサイルを印中国境に配備しているのだ。
もちろん、中国側も対策をとっている。中国が空軍基地の数を大幅に増やしているのは、そのためだ。爆撃されても他の基地がある、というわけである。それでも、米国のB-1爆撃機がインドに来たことは、中国にとっては、心配の種だろう。
緊張高める中国
ただ、こんなことになったのは、もともと中国の行動が原因だ。中国は、印中国境で行動をエスカレートさせているからだ。
以前紹介したことがあるが、中国の印中国境における侵入事件の数を見ると、中国が日本の尖閣諸島周辺に対して行う侵入事件の数と連動して、増加している(「インド陸軍が日本で共同演習 世界にとっても重要な理由」)。つまり、日本に対して行うのと同じように、インドに対して、中国は行動をエスカレートさせ、インドの警戒感を高めているのだ。
ただ、日本の場合と違うのは、2020年に印中両軍は実際に衝突し、インド側だけで、死傷者を100人近く出していることだ。それ以降、両軍は、最新の武器を展開し、34カ月以上、戦闘準備状態で、にらみ合ったままだ。
しかも、中国側は、領土拡大を徐々に進めるための村を600以上建設している。南シナ海の人工島のように、村を拠点に軍事力を展開するのである。
今年4月になり、中国はさらに緊張を高める政策をとった。インドのアルナチャル・プラデシュ州について、勝手に地名を変更したのである。
地名を決める権利を持っていると示すことで、そこは中国領であることを強調した。当然インドは怒る。アルナチャル・プラデシュ州は、インド政府の統治がきちんと及んでいるのだから、中国が勝手な地名を決めるのは、非常に挑発的な行為だ。
インド側も、中国に対して、厳しい姿勢を保ったままだ。昨夏には、印中国境から200キロメートルのところで米印共同軍事演習、昨年末には、印中国境から100キロメートルのところで米印共同演習、そしてとうとう今回、米軍の爆撃機を受け入れて共同演習を実施した。