
アメリカ政府が打ち出した関税政策によって世界の株式市場が大きく揺れる中、アメリカのドナルド・トランプ大統領は6日、「何かを治すには、時には薬が必要だ」と記者団に述べ、自らの政策の正当性を力説した。アジア各地の株式市場では7日、前週の下落傾向が続いた。
トランプ氏が2日に新たな関税措置を発表して以来、世界中で株式市場が大きく揺れている。
アジアでは7日午前、東京株式市場の日経平均が、前週末の終値比で6.5%低い2188円74銭安の3万1591円84銭と大幅続落。午後も下落が続き、前週末終値より2644円(7.83%)安の3万1136円58銭で取引を終えた。
中国、オーストラリア、韓国、台湾、シンガポールの各市場でも7日の取引開始から下落。香港のハンセン指数は13.22%下げて取引を終えた。AFP通信によると、これは1997年のアジア通貨危機以来の下落幅という。
日本時間7日午後から開いた欧州の株式市場も続落し、ドイツのDAX指数は一時10%下げた。フランスのCAC40指数は7%、イギリスのFTSE100指数も6%近く、一時下落した。
米株式市場は先週4日、主要3指数がすべて5%以上急落した。S&P500種は6%近く下落。同市場にとって先週は、2020年以降で最も大きく下落した週となった。週明けも、不安定な状況が続くと予想されている。
日曜日も取引があるサウジアラビアの株式市場は6日、7%近く下落。国営メディアによると、1日の下げ幅としては、新型コロナウイルスの世界的な流行以来、最大となった。
「何かを治すには薬が」とトランプ氏
こうした中、トランプ氏は6日夜、大統領専用機の機内での記者団とのやりとりで、ヨーロッパやアジアの国々が「取引をしたがっている」と主張した。
アメリカの消費者の間で物価高騰や景気後退への懸念が高まる中、「痛みに対する閾値(いきち)」についてどう考えるかと記者に問われると、「その質問はとてもばかげていると思う」、「私は何も下がってほしくはない。だが、何かを治すために、薬を飲まなければならないこともある」と答えた。
トランプ政権の経済閣僚らも、関税政策を維持すると強調している。
スコット・ベッセント財務長官は6日、米テレビ各局のインタビューに応え、株価の下落は大したことではないと主張。景気後退を予想する「理由はない」とし、「これは調整の過程だ」と述べた。
ベッセント長官はNBC番組「ミート・ザ・プレス」に出演した際には、トランプ氏が「最大限の影響力を自ら作り出し、50カ国以上が非関税貿易障壁の引き下げや、関税の引き下げ、為替操作の停止について米政権に打診している」と力説した。
ハワード・ラトニック商務長官もこの日、テレビ番組に出演。相互関税は予定通り発動されると強調した。
CBSニュースの番組では、すべての輸入品を対象にし、5日に発動となった10%の「基本関税」について、「数日、数週間はそのままになる」と発言。税率の高い相互関税に関しても、まだ予定どおりだと述べた。米政府が「最悪の違反者」と呼ぶ約60カ国にかける高率の関税は、9日に発動の予定となっている。
また、ペンギンしか住んでいない南極の小さな2島に関税が課されることについては、中国などによって貿易に利用されないよう「抜け穴」をふさぐのが目的だと主張した。
米経済に関してトランプ氏に助言する立場の側近のケヴィン・ハセット氏もこの日、50カ国以上がアメリカとの交渉開始を望んでいるとの主張を繰り返した。
ただ、ハセット氏もベッセント氏も、どの国から接触があったのかについては明らかにしなかった。
インドネシアと台湾は報復せず
米政府が32%の関税を課すとしているインドネシアと台湾は先週末、アメリカに報復関税をかけることはしないと発表した。
ヴェトナムは、46%の関税を「少なくとも45日間」延期するよう、トランプ氏に書簡で要請した。AFP通信と米紙ニューヨーク・タイムズが、この書簡を見た。
一方、中国は4日、アメリカからのすべての輸入品に対し、34%の関税を10日から課すと発表した。
イギリスのキア・スターマー首相は5日、「私たちが知っていた世界はなくなった」と警告。英政府として、関税の一部を回避できるような経済協定を求め続けていくと述べた。
首相官邸の報道官によると、スターマー氏はカナダのマーク・カーニー新首相と電話で協議し、「全面的な貿易戦争は誰の利益にもならない」という見解で一致したという。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7日、米首都ワシントンでトランプ氏と貿易交渉をする予定となっている。
アメリカでは5日、各地の都市で「反トランプ」のデモが行われた。トランプ氏が1月に大統領に復帰して以来、最大の抗議活動となった。
ボストン、シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、首都ワシントンなどで、数十万人が参加。社会問題から経済問題まで、トランプ氏の政策に対する不満を訴えた。
株式市場の混乱をめぐっては、トランプ氏は米国民に「頑張る」よう呼びかけている。
(英語記事 Defiant Trump vows to stay course as countries scramble over tariffsAsian markets plunge as Trump says 'sometimes you have to take medicine')