2024年12月5日(木)

World Energy Watch

2023年5月22日

 5月19日から広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明は20日に発表された。その中に、「G7は気候上昇を1.5度に抑制するパリ協定のコミットメントについては揺るがない」と書かれている。

議長国である日本をはじめG7サミットで、脱炭素へのコミットが謳われたが(ロイター/アフロ)

 一方「新興国と途上国がそれぞれの事情を考慮した多様かつ実践的方法で(温室効果ガス)ネットゼロを目指す取り組みを支援する」と謳われている。

 日本政府の案だろうが、途上国の事情に配慮することは大変に望ましいことだ。ではG7各国それぞれの事情に配慮する必要はないのだろうか。

 G7国の経済力には差がある(図-1)。エネルギー自給率も大きく異なるG7国(図-2)が、同じように2050年の脱炭素を目指すのは不思議だ。国の持つエネルギーも異なるし、再生可能エネルギーを利用する自然条件も異なる。さらに言えば、エネルギー消費を左右する産業構造も将来の人口予測も、加えて政策による支援策も異なる。共通することは何もない。

 そんな中で同じ目標を立てれば、脱炭素実現によりエネルギーコストが相対的に高くなる国が出てくるのは当然だ。その国の産業と国民生活は大きな影響を受ける。

 例えば、首脳声明の中に、現在G7国に2300万キロワット(kW)設置されている洋上風力発電設備を「30年までに1億5000万kW分増加させる」と書かれているが、脱炭素の時代に主役になるとされる洋上風力のコストは、明らかに日本では高い。

 声明も触れている脱炭素のため期待される水素のコストも、現在日本で想定されている輸入が前提であれば、水素もアンモニアも欧米諸国より高くなり、水素を利用する産業は競争力を失う。

 G7が脱炭素を目指せば、その中で日本は間違いなく高エネルギーコストの国になり、家庭と産業に影響が生じる。エネルギー価格が、経済情勢を上向かせるレベルにならなければ、人口減少も続き経済大国と呼ばれなくなる可能性もある。

G7で脱炭素が実現した暁には、日本はG7の負け組になる。否、その時にはG7からも脱落しているかもしれない。日本が生き残るためには、私たちは何をしなければいけないのだろうか。


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