2024年12月4日(水)

World Energy Watch

2023年5月10日

 「企業はESGに配慮すべき」と考える人が増えてきた。ESGとは、環境(Environment)、社会(Society)、企業統治(Governance)を表し、例えば、気候変動問題(E)、人権、児童労働(S)、透明性のある健全な企業経営(G)への配慮を求める考えだ。

 そうした企業へ投資する「ESG投資」も注目されるようになった。読者の中にもESGに配慮した企業に投資するファンド、投資信託を購入されている方もおられるだろう。

(Khanchit Khirisutchalual/unpict/Banphote Kamolsanei/gettyimages)

 世界のESG投資額も増加を続けていたが、今年の第1四半期には世界の新規投資額が減少した。見せかけの環境への取組(グリーンウォッシュ-Greenwashing)を規制する動きが欧州内で広まり、米国では反ESGの動きがある中で、慎重な動きが強まったためとされる。

 ESG投資は曲がり角なのだろうか。欧米企業の取組を見ると、そうではなさそうだ。ESGを巡る政治、経済の動きが顕著になる中で、欧州企業も米国企業もESGを利用してしたたかに収益を上げることに熱心なのだ。

 日本企業はESGの一つとして脱炭素に真正面から取り組んでいるが、国際競争力に影響はないのだろうか。

取り締まられるグリーンウォッシュ

 昨年5月、オランダの環境保護団体などがKLMオランダ航空の「責任ある飛行」キャンペーンはグリーンウォッシュであり、欧州連合(EU)の不公正な広告指令に関するオランダ国内法に違反しているとしてKLMを訴えた。

 キャンペーンの中でより持続可能な飛行を実現する途上にあるとしたのは航空業界が成長する中で実現することはない、フライトの気候変動に対する影響を緩和するとして植林活動と合成燃料へ寄付を募っていることの実効性がない、としてそれぞれ訴訟の対象となった。

 今年4月の法廷でKLMは、訴訟対象となった広告を取りやめると述べたが、訴訟対象である植林活動と合成燃料への寄付により影響を緩和するオフセットの提案については継続する立場を明らかにしている。

 豪州の航空機を利用しないと主張する環境団体は、今年2月、メルボルンに掲げられたアラブ首長国連邦のエティハド航空の屋外広告をグリーンウォッシュとして豪州の競争・消費者委員会(ACCC)に調査を申し立てた。

 エティハド航空は、「飛行は地球に負担をかけることはありません。2050年までに純排出ゼロ」と広告したが、申し立てを行った環境団体は「飛行が環境に影響を与えないことはないし、排出ゼロの信頼できる道筋もない」と主張している。申し立ての直前にはACCCのグリーンウォッシュに関する報告書が公表されていた。


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