ACCCは豪州の8分野における247の事業とブランドのグリーンウォッシュについて調査したが、57%に虚偽あるいは誤解を招く表示があったとしている。消費者が選択する際に、グリーンが選択肢の一つになることが増えていることから、ACCCは公正な競争が阻害されていると報告している。
企業がグリーンウォッシュを行えば、ファンドがESG投資の対象として企業を選択する際にも問題が生じる。EUではファンドが曖昧な基準で投資対象を選択していたことが明らかになった。
EUで減少した新規ESG投資
EUではESG投資が増加する中で、透明性の確保とグリーンウォッシュ防止のため、21年3月に持続可能な金融の開示規則(SFDR-Sustainable Finance Disclosure Regulation)が適用になった。すべての金融市場参加者とアドバイザーは、ESG投資に関して開示が要求されるようになった。
ESG投資に関する金融商品は2種類に分類され、パリ協定に基づき温室効果ガスを削減する企業などへの持続可能な投資(ダークグリーン)とESGの要素を含む投資(ライトグリーン)のどちらかを、金融機関が判断し選択することになっている。
今年1月にSFDRの細則が発表され、より詳細な開示が求められるようになったが、その前に多くのファンドが自主的にダークグリーンからライトグリーンに分類を変更した。
グリーンウォッシュとされることを懸念した動きなのだろう。今年第1四半期の新規のESGファンドの組成数もEUでは減少したと伝えられた。一方、ESG投資の中に石炭関連事業への投資を行っているファンドが、かなりあるとも報道されている。
石炭への投資も続けるファンド
調査会社モーニングスターのデータを基に、ロイターが報じたところでは、ライトグリーンにもダークグリーンファンドにも、石油会社、石炭会社への投資が含まれている。
世界最大のファンド運営企業ブラックロックを筆頭に、多くのファンド運営企業が石炭関連投資からの撤退を表明していたが(「「脱炭素」ブームの真相 欧州の企みに翻弄される日本 脱炭素バブル したたかな欧州、「やってる感」の日本」)、昨年10月の英国議会の環境監査委員会では、ブラックロックは石炭関連への投資を止めるつもりはないと表明している。
ブラックロックは、前イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏主導の下で設立され50カ国以上から550以上の金融機関が加盟する「ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)」に参加している。
議会委員会はGFANZを含め金融機関の役割を調査しており、「石炭、石油、天然ガスへ新規投資しないネットゼロを支持するか」との質問を投げかけたが、ブラックロックの回答は「否。ブラックロックの役割は顧客の信託に応えることであり、現実社会で脱炭素の結果を導くことではない」だった。
ブラックロックのCEO(最高経営責任者)は、次のように弁明している。「保守派からはESGに取り組んでいると攻撃され、環境派からは取り組んでいないと攻撃される。どうすれば良いのか。兎に角前には進んでいる」。
脱炭素はどこかに行ったようだが、依然として石炭関連事業への投資がある背景は、エネルギー危機により石炭価格が史上最高値を更新するほど値上がりしたことだろう(図)。
脱炭素により石炭価格は低迷すると踏んでいたが、そうではなかった。高い収益が見込めるのであれば撤退する理由はないということだ。ESGと言いながら収益を優先している。
ESGも反ESGも求めるものは収益だ。