ロシアと欧州連合(EU)諸国との間で、化石燃料を巡る力比べが続いている。EU諸国は、ロシアからの化石燃料輸入量を削減することにより、ロシアに対する制裁を強め戦費になるロシアへの代金支払額削減を狙っている。
今月からEU諸国はロシア産石炭の輸入禁止を開始し、さらに、今月から来年3月まで、天然ガス消費量を過去5年間平均使用量から15%削減することも実行する。
ロシアは、EUのロシア産化石燃料輸入量の削減に先んじてEU向け供給量を削減し、化石燃料不足に苦しむEU諸国が音を上げるのを待っている。「ロシアとEUの腕相撲」とドイツ・ハーベック経済・気候保護大臣が述べる状況だが、今のところ供給量の減少にもかかわらず化石燃料価格の上昇により収入を維持しているロシアが優勢だ。
EUとロシアの腕相撲もあり、天然ガス、石炭価格はロシアのウクライナ侵略後大きく上昇しているが、ウクライナ侵略以前から、原油も含め化石燃料価格は上昇を始めていた(図1)。需給バランスが崩れたためだ。
コロナ禍による経済活動の低迷により2020年化石燃料需要量は大きく減少した。需要減により米国では原油価格がマイナスになるほどだった。つまり、原油を貯蔵する場所がなくなり、購入してもらえるのであればお金を付ける状態になった。
化石燃料価格上昇が招く食料と途上国へのあおり
2021年コロナ禍からの経済回復に合わせ燃料需要は回復したが、供給量は回復せず価格の上昇が始まった。価格上昇の原因の一つは、機関投資家を中心に温暖化対策のためとして石炭を筆頭に化石燃料企業への投資から撤退する動きが続き、化石燃料価格下落と相まって、エネルギー資源開発への投資が減少し供給不足を招いたことだった。
昨年からのエネルギー価格上昇は、多くの国で電気・ガス料金の上昇を引き起こしたが、途上国での影響は価格上昇には留まらない。燃料を買うことができず停電を招く事態まで生じている。
さらに大きな問題はエネルギー価格上昇が肥料原料、アンモニアの価格上昇を引き起こしていることだ。途上国では、高騰する肥料の購入ができない農家が今後出てくるとみられている。