2022年12月3日(土)

World Energy Watch

2022年7月4日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 猛暑が続いている。毎日のように東京電力管内では電力需給逼迫注意報が発令され、発電所の故障があれば、大きなニュースとして報じられている。なぜ、電力需給が厳しいのだろうか。

東京電力管内では電力需給逼迫注意報が発令され、節電が強いられている(ロイター/アフロ)

 新聞の中には、「電力会社が脱炭素のため火力発電所の休廃止を進めた」との解説を掲げるところもあった。間違いだ。電力会社が火力発電所の休廃止を進めた理由は、電力市場の自由化により利用率の低く採算が悪い発電所の維持ができなくなったからだ。

 2016年の電力市場自由化以降、二酸化炭素排出量が多い石炭火力設備は増えている。減っているのは利用率が低い石油火力だ。

 また、小池百合子都知事の太陽光発電設備設置義務化政策を支持する立場から、太陽光発電設備を設置すれば、電気料金を節約でき、電力供給も増えるとの解説もあった。間違いだ。今の供給設備減少の背景には、太陽光発電設備の増加により、石油火力発電所の利用率が一段と低迷し、休廃止が進んだことがある。

 この状況で太陽光発電設備が増えれば、安定供給に欠かせない火力発電設備をさらに減少させ、日没後あるいは悪天候時の停電の可能性を高める。加えて、再エネ設備が増えれば、賦課金額の負担により電気料金は上昇する。

 6月30日ロシア・プーチン大統領は、日本向け液化天然ガス(LNG)供給の約8%を担うサハリン2の事業主体を、ロシア政府が新たに設立する企業に変更し、資産を新会社に無償で譲渡することを命じる大統領令を発令した。日本企業が参加するロシア・サハリン2事業の国営化により、ロシアからのLNG供給が途絶あるいは減少する懸念も出てきた。

 そうなれば、燃料不足により十分な量の発電ができなくなり、電力需要ピーク時だけでなく、常時節電が必要になるかもしれない。悪いことは重なる。6月上旬、米国に7つある(アラスカを除く)LNG輸出ターミナルの一つで爆発事故があり、10月まで出荷が停止する予定だ。これからLNG価格の高騰もありえる。危機は深まるばかりだ。

電力需要は減少しても、直面する停電危機

 日本の電力需要量は東日本大震災以降減少を続けている。需要が落ち込む中で、停電危機が発生するのは、供給力がそれ以上に落ち込んでいるからだ。

12年から固定価格買取制度(FIT)を導入し、再生可能エネルギーの導入を進めたので、太陽光発電設備を中心に再エネ設備は大きく増えたが、石油火力発電設備は減少を続けている。再エネ設備と火力発電設備の違いは、天候次第で発電量が決まるか、燃料があればいつでも発電できるかだ。電力供給上では大きな違いだ。

 停電危機の背景を簡単に言えば、東日本大震災後に原発の停止が進み供給力が減少したことに加え、電力市場自由化が行われ、さらに太陽光を中心に再生可能エネルギー導入が進んだことだ。結果、利用率が低い石油火力発電所の休廃止が進んだ。

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