2024年4月25日(木)

World Energy Watch

2022年7月4日

 東日本大震災後、電力需要量が波を打ちながら減少している背景には、節電意識の高まりもあるが、製造業を中心とした産業部門が低成長を続けていることも影響している。

 10年度に1兆キロワット時(kWh)を超えていた電力需要量は、20年度9135億kWhと1割以上減少した。最大の需要減少を見せた分野は製造業だ。業務用、家庭用の電力消費量も減少している(図-1)。家庭などでの太陽光パネル導入量の増加も電力需要量に影響を与えている。

 供給力も減少しているが、目立つのは、東日本大震災後の原子力発電所の停止による供給量の落ち込みを一時補った石油火力発電所からの発電量が、減少し続けていることだ(図-2)。火力発電の中では燃料費が高い石油を利用する火力発電所は、需要量が多い夏、冬の一時期しか利用されないので、需要量が落ち込み、再エネによる発電量も増えれば、一挙に利用率が下がる。

 そのため、石油火力発電所の採算が悪化し、老朽化した石油火力発電所の休廃止が行われた。市場の完全自由化が行われた16年4月に3824万kWあった石油火力発電所は、今年3月には2504万kWまで減少している(図-3)。夏季、冬季の電力需要ピーク時に発電設備が不足するようになった大きな原因だ。

日本と欧州の電力危機の違い

 停電危機に襲われているのは、日本だけではない。ロシアへの化石燃料依存脱却を図っている欧州諸国もエネルギー、電力危機に直面している。ただし、日本と危機の根本的な原因は異なる。

 日本では、電力需要ピーク時に電力供給を行う発電設備が不足している。欧州諸国では十分な発電設備容量はあるが、燃料不足により必要な需要量を発電できず供給量が不足する心配がある。ロシアからの化石燃料供給量が減少しているからだ。

 ロシアは、欧州諸国に対し天然ガス代金をルーブルで支払うよう要求し、要求を拒んだとしてブルガリアとポーランド向け天然ガス供給を4月27日に停止した。さらに、ロシア・ガスプロムは、パイプライン駆動用独シーメンス製ガスタービンがカナダでのメインテナンスから制裁の対象となり戻ってこないとし、ドイツに直接天然ガスを送るノルドストリーム1パイプラインの輸送量を6月中旬から削減し始めた。

 6月下旬には削減率は約60%まで拡大している。7月11日からはノルドストリーム1では点検が始まり、供給量が大きく落ち込む。そのまま供給が途絶えるかもしれないとも言われている。


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