電気料金の上昇が国民生活にも産業にも大きな影響を与えている。電気料金の上昇により経営に大きな打撃を受けている水族館や遊園地の窮状といったニュース報道もあったが、全ての企業がコストに占める比率の違いはあれ、料金上昇の影響を受けている。加えて、節電要請により電気も自由に使えない状況になれば経営状態はさらに悪化しそうだ。
水族館ほどの影響ではないにせよ、例えば、スーパーマーケット、デパートでは、これから冷房用の電力消費が増える。電気料金の上昇は経営に大きな負担となり、人件費など他の経費圧縮への圧力が強まる。
料金上昇の原因は、ロシアのウクライナ侵略により一段と上昇した化石燃料価格だ。欧州連合(EU)は、侵略前天然ガス需要量の約4割、石油の約3割、石炭の約2割をロシアに依存していた。
EUが脱ロシアを進め、ロシア以外の供給国からの調達を増やせば、日本の輸入国と競合することとなり、当然価格は上昇する。おまけに円安となれば、円換算の価格上昇率はさらに大きくなる。
電気料金が高騰したため、自由化した電力市場で電気の購入ができず地域の送配電会社(東京電力パワーグリッド、関西電力送配電など北海道から沖縄までの10の送配電を担当する会社)から最終保障供給に基づき供給を受ける事業者も増えている(「日本の危機 いよいよ電気を買えない時代が始まる 」)。
今後、料金上昇につながる制度の変更が予想されるので、燃料費の上昇以上に電気料金が値上がりする可能性もある。節電要請と相まって電力消費量が多い業種を中心に企業業績には深刻な打撃を与えることになり、物価高の中で給与が上がらない原因にもなりかねない。
燃料価格上昇により主要国は電気料金を軒並み引き上げているので、日本企業の国際競争力には影響はないと思われがちだが、そうではない。東アジアの競争相手、中国と韓国の電気料金は上がらないからだ。電気も自由に使えない日本企業はますます窮地に追い込まれる。
値上げが続く電気料金
ロシアが欧州向け天然ガス供給量を絞り始めたことに端を発した欧州エネルギー危機は、ロシアのウクライナ侵略によりさらに深まり、天然ガスは無論、石炭、石油価格も上昇している。
欧州諸国は、脱ロシアのため、米国、カタールからの液化天然ガス(LNG)、豪州、インドネシアからの石炭購入量を増やし始めている。日本の主要な供給源と被っており、日本向けの価格にも影響を与える。
日本の発電量の約3割は石炭、約4割はLNG火力により供給されている。石油を合わせると4分の3は、化石燃料から発電されているので、電気料金も上がる。