2022年10月5日(水)

World Energy Watch

2022年5月6日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 どこからも電気を買えないことがある。と言っても家庭での話ではない。大口需要家と呼ばれる工場、ビル、公共施設などが電気を買えなくなっている。

 

 電気は大きく分けると、小規模需要家の家庭向けと大口需要家の工場、ビルなどの産業・業務向けに分かれる。家庭用は、発電所から送り出される高電圧の電気を何段階かの変電所と変圧器で100ボルトまで電圧を下げてから配電されている。一方、産業・業務用電気は、ある程度高い電圧で工場、建物に送られ、需要家が電圧を下げて利用する。

 電気料金も当然異なる。変電と送配電の手間が少なくなる産業・業務用の電気料金は家庭用よりも安くなる。電力市場は自由化されているので、家庭は無論のこと企業も官公庁も電力を小売りする事業者を選択することになる。

 産業・業務用の電力供給は1年契約で行われることが多い。しかし、供給契約の期限が切れるので新しい契約を結ぼうとしても小売り事業者が同意せず結べない。あるいは、官公庁が入札で新規契約の小売事業者を募集しても入札がない。中には、契約更改時に電力の小売り事業者から、とんでもなく高い料金を提示され「この料金が嫌だったら、最終保障供給に行ってください」と言われた企業もある。言い方に公益事業の矜持は感じられない。

 新電力とよばれる電気の小売事業者の撤退により、電力小売り事業者の切り替えを迫られた家庭もあるが、家庭向けの供給を行う小売事業者は多く、新しい小売事業者を選択可能だ。産業・業務用電気については、話は別だ。なぜ電気が来なくなるのだろうか。最終保障供給って何だろうか。

ロンドンの電気料金は東京の2倍に

 欧州に端を発したエネルギー危機により電気料金が大きく上がり、電力市場が自由化されている英国などでは、電気の小売事業者の破綻が相次いでいる(「電力小売り企業の大ピンチ 新電力は生き残れるのか」)。欧州との比較で、日本は天然ガス価格上昇幅も、電気料金値上がり幅もまだ相対的に小さい。

 今年2月の欧州主要都市と東京の家庭用電気料金(税込み)は図-1の通りだ。欧州で最も高い電気料金はロンドン。東京の2倍にもなる。コペンハーゲン、ブリュッセルの料金も1キロワット時(kWh)当たり40ユーロセント(約55円)を超えている。

 同じ基準での統計ではないので大雑把な数字になるが、欧州連合(EU)統計による2020年後期の加盟国の家庭用電気料金からの値上がり率は、ローマ77%、ブリュッセル60%、コペンハーゲン53%、マドリッド36%、ベルリン33%、パリ22%。

 欧州の多くの政府は電気料金高騰抑制のため税軽減措置、補助金投入を行ったが、その政策にもかかわらず大きな上昇があった。その理由は、欧州において天然ガス価格を筆頭に化石燃料価格が上昇を続けたことだ。図-2が示す通り、欧州の天然ガス価格は20年5月の月間価格1.58ドルから22年3月には27倍値上がりし、42.39ドルになった。化石燃料価格は、電気料金に大きな影響を与える。

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