ロシアによるウクライナ侵攻が始まり2カ月ほどが過ぎようとしている。何と言ってもロシアは2020年時点で世界の石油輸出の11.4%(米国、サウジアラビアに次ぐ第3位)、ガス輸出の25.3%(世界最大)を占める大資源輸出国であるため、侵攻による経済制裁の一環でロシア産資源の禁輸措置が広がる思惑から、石油・ガスはもちろん石炭まで価格が急騰することとなった。
化石燃料の急騰を受け、わが国では「化石燃料に依存していると、こうした地政学的な危機によってエネルギーの安定供給が脅かされる。国内自給できる再エネ導入が足りないのが問題で、一層再エネの導入スピードを加速するべき」というような主張をする人たちがいる。実に短絡的な視点であり、かえってわが国のエネルギー安定供給と経済性を危うくする暴論である。以下、反論していこう。
TV番組が「TVを消して」と呼びかけ
「再エネ導入の加速を」という主張は今年3月22日に東京電力管内において停電間際にまで追い込まれた電力需給逼迫の際にも耳にした。需給逼迫に再エネ(太陽光)は明らかに責任の一端があるのに反省もせず、盗人猛々しいと思わざるを得なかったものだ。
3月22日の需給逼迫の直接的原因は確かに、同月16日深夜に発生した福島沖地震により東北から関東の太平洋側に立地する11カ所の火力発電所が相次いで停止、その後随時復旧したものの、22日時点で6基330万キロワット(kW)の火力発電が停止中の状態であったことにある。そこに冷雨の天候条件が重なり暖房需要が高まる中、この脱落した330万kW分を埋めるのが容易ではない状況であった。
東京電力を始め、旧一般電気事業者の各社は停電を回避するべく必死の手立てを講じ、例えばこの日東京電力は他の一般送配電事業者から最大142万kWの電力融通を受けている。また揚水発電がフル稼働でギリギリの電力需給を支えたことも報道されていたのでご存じの方も多いかもしれない。それでも午後2時台には供給力に対する需要の割合を示す使用率は107%に達し、大停電に陥る寸前となり、TV番組が「いますぐTVを消して」と呼びかける深刻な事態となったのである。
電力供給に最終的な責任を持つ(自由化が進んだ現在となっては本来その責任は免除されて然るべきであるが)旧一般電気事業者が奮闘している中、再エネは何をしていたのか?