World Energy Watch

2022年2月11日

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山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)

常葉大学名誉教授

NPO法人国際環境経済研究所所長。住友商事地球環境部長などを経て現職。経済産業省産業構造審議会臨時委員などを歴任。著書に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム社)など多数。

 ロシア・ウクライナ間で緊張が続いている。ロシアは欧州連合(EU)の天然ガス需要量の4割を供給しており、政治的な武器として天然ガス供給を停止あるいは削減する可能性も取りざたされている。その時に備え、米国の要請により日本からEUに液化天然ガス(LNG)を融通する動きもある。

(Mikhail Mishunin/gettyimages)

 ロシアが外貨収入を支えるガス供給を途絶させることはなく、あるとしても一部に留まるとの観測があるが、ロシアによる侵攻が発生した場合には、欧州向け供給を担うウクライナ経由のパイプラインが使用不可能になる可能性もある。あるいは、ロシアが侵攻した場合には、バイデン大統領が警告した通りロシアの天然ガスをドイツに運ぶため新設されたパイプライン・ノルドストリーム2の停止もあり得る。

 加えて、米国、EUがロシアに対する制裁対象に、ロシア産エネルギーを含める強硬策に出る可能性もないとは言えない。ガスが途絶えたら、まだ寒い欧州にとっては大変な事態になる。

明らかになった「脱炭素」の弊害

 今回の事態が明らかにしたことは、いくつかある。第一にエネルギー安全保障の重要性、つまり供給の多様化だ。エネルギー供給に問題が発生すると、エネルギー・電力価格に大きな影響を与える。第二に、温暖化政策とエネルギーの安定供給、価格のバランスの取り方だ。ロシア産天然ガスへの依存を高めたのは、EU主要国が進めた拙速な脱石炭、再生可能エネルギー導入政策だった。第三に、今後のエネルギー環境政策の進め方をよく練らなければ、適切にエネルギーを得られない可能性が浮き彫りになった。

 欧州委員会(EC)は、欧州グリーンディールの中で、2030年までに、15年比石炭を70%、石油を30%、天然ガスを25%削減するとしている。その一方、今回の危機に際し、天然ガス供給の多様化の必要性が明らかとなったとして、ECはアゼルバイジャンなどに輸出数量増を要請している。

 米国も、日本などの需要国に加え、供給国、オイルメジャーにも協力を要請していると伝えられている。10年で需要が減少することが分かっていて増産の投資を行う企業があるだろうか。かなりECは虫が良い話をしている。

 EUが供給の多様化を図る一方、ロシアも需要家の多様化を図っている。オリンピックのため北京入りしたプーチン大統領は、中国向け天然ガス輸出の長期契約を獲得したと報道されている。欧州エネルギー危機が中露の関係を深めている。

 この危機は、日本にとって他人事ではない。エネルギー自給率が、日本12%(20年度)の3倍以上、42%あるEUがエネルギー危機に直面している事実から、日本はLNGの融通で協力するだけでなく、多くのことを学ぶ必要がある。

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