天然ガス消費量が増える一方、EU内の化石燃料生産量は減少を続けている。天然ガス生産量は、10年前の3分の1以下まで減少した。このため、EUのエネルギー輸入依存度も上昇する一方だ(図-3)。
天然ガスの輸入依存度は90%になった。そんな中で存在感を増しているのが、ロシアだ。天然ガスは無論のこと、石炭、石油もロシアが最大のEU向け輸出国だ。19年のEUの石炭輸入に占めるロシアのシェアは44%、石油は27%だ。EU内生産量を合わせた全供給量に占めるロシアのシェアは、石炭で19%、石油で26%になる。
天然ガス供給におけるロシアの存在感は、さらに大きい。21年前半のロシアのシェアは50%に迫っている(図-4)。この供給が停止することがあれば、暖房、発電、さらには産業にまで大きな影響が生じ、供給停止の量によっては産業部門でのエネルギーの割り当ても視野に入ってくる。
ロシアからは主としてパイプラインにより天然ガスが送られている。その中で最大のルートは、かつてはウクライナ経由だったが、ウクライナとの緊張が高まるにつれウクライナルートの数量は大きく減少している。
ノルドストリームが存在感を示す天然ガス供給ルート
欧州向け天然ガス供給を行っているロシア・ガスプロムの供給ルートは図-5の通りだ。06年と09年の2回、ロシアとウクライナ間の天然ガス価格交渉が難航し、ロシアはウクライナへの天然ガス供給を厳冬期の1月に停止した。
当時の欧州向け供給の8割から9割はウクライナ経由であったため、欧州向け天然ガス供給も停止することになった。この事態からウクライナ以外のルートが開発される一方EU内での貯蔵設備も建設された。
そのルートの一つとして、ドイツとの間を直接結ぶノルドストリーム1が11年に運転を開始した。ウクライナルートも依然活用されているが、ウクライナへの通過料の支払いを嫌うロシアにより、その数量は年々減少しており、20年には、ノルドストリーム1が欧州向けの33%のシェアを持ち、31%のウクライナルートを上回った。