2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2022年2月11日

「親EU派」だけでは捉えられないウクライナ

 2000年代、筆者は企業で温室効果ガス削減事業に従事しており、インドでの排出削減事業を日本初案件として国連登録を行ったりしていた。共同実施と呼ばれた排出削減事業をウクライナでも実施することを狙い、ウクライナの首都キエフ、東部の工業都市ドネツィクによく出張していた。

 日本からキエフに直行便はなく、モスクワ経由あるいは欧州の都市経由になるが、日によってはキエフから中国には直行便が飛んでいた。北京直行便が運航される理由の一つは、ウクライナの宇宙に関する技術を学ぶため中国から大勢の来訪があるためとのことだった。ウクライナの大学の宇宙関連講座で学ぶ中国人留学生も多いと聞いた。ひょっとするとウクライナが中国の宇宙技術の基礎を作ったのかもしれない。

 ウクライナは旧ソ連時代、宇宙開発を担っており、旧ソ連の宇宙技術の3分の1を引き継いでいるとされる宇宙技術の先進国だ。ウクライナ製ロケットエンジン、ナビゲーションシステムなどは、世界で広く使用されており、過去30年間にウクライナ企業は169基のロケット打ち上げに関わったとウクライナ政府は発表している。

 大農業国でもあるのだが、東西で異なる文化圏を持つ。キエフを中心にした西部に住む多くの人は、カソリック信仰の影響も受ける親EUだが、東部に住む多くの人はロシア正教教徒、親ロシアだ。キエフの住民は当然ロシア語も分かるが、ウクライナ語で会話している。東部では、主としてロシア語が話されている。過去、親EU派と親ロシア派間で、大統領選を巡る混乱が引き起こされたこともある。

 ロシアがウクライナに侵攻する可能性があり緊張が高まっているが、かつてのソ連に属していたロシアに隣接するエストニアなどのバルト3カ国が北大西洋条約機構(NATO)に加入した際には、ロシアは大きな問題にしなかった。ロシアが強硬姿勢を取るのはNATOの拡大が続くことへの苛立ちと、ウクライナの国力、技術力、親ロシア派が多く居住しているということもありそうだ。

ロシア依存度が高まるEU諸国

 EUと日本の一次エネルギー供給は、図-1の通りだ。日本との比較では、水力を含む再生可能エネルギーと原子力の比率が多く、自動車用燃料として使用される石油の比率が高いものの、バランスが取れている。EU主要国は、この数年間温暖化対策のため脱石炭を進め、代替として太陽光、風力発電設備の導入を行った。

 だが、石炭減少分を補うことはできず、天然ガス火力の稼働率を上げ対応することになり(図-2)、天然ガス使用量が増えてしまった。欧州エネルギー危機の原因の一つは、脱石炭と再エネ導入政策にあった(「欧州で急騰する電気料金 日本も「明日は我が身」か? 」)。


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