2022年12月6日(火)

World Energy Watch

2022年4月22日

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堀井伸浩 (ほりい・のぶひろ)

九州大学経済学研究院准教授

慶應義塾大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所に入所。中国清華大学技術・経済エネルギーシステム分析研究院客員研究員、日本貿易振興機構アジア経済研究所副主任研究員などを経て現職。専門は産業経済論(中国のエネルギー・環境問題)。

 そして今年1月下旬の政治局会議における習近平国家主席による講話として、「二酸化炭素(CO2)削減は同時に、エネルギーや食料の安定供給、産業チェーンの安全保障も確保した上で、人々の日常生活を確保しなければならない」という原則が公表され、短期的な、政治主導の急進的な気候変動政策の修正が行われた。昨年秋の停電の一因に風力の急激な出力低下があることを踏まえ、安定供給に果たす石炭火力の役割を再評価したということだろう。

日本の再エネ加速は亡国の提言

 他方、中国は再エネの導入スピードを大きく減速させるつもりもないだろうとも見る。近年、習近平国家主席の肝いりもあってか、ややスケジュールよりも加速していたものを本来のペースに戻すということではないか。但し、わが国と中国の再エネ導入の意義づけは全く異なることを重々認識しなければならない。

 何と言っても、中国にとって再エネは海外に輸出が見込めるグリーン成長を実現する戦略産業である。その競争力を磨くのは国内市場であり、国内市場への導入が鈍れば国際競争力に影響を及ぼす恐れがある。つまりわが国と異なり、中国では再エネ導入がしっかりと経済的リターンとして戻ってくる構図を構築することに成功しており、その戦略の一環で引き続き再エネ導入拡大を進めていけるということである。

 中国は気候変動対策が経済に及ぼすマイナス(化石燃料からの脱却)を出来るだけ抑えるようにしつつ、グリーン成長という形でむしろプラス(再エネの輸出)も得る戦略で動いている。わが国は再エネによるグリーン成長にほとんど期待できないにもかかわらず、未だに再エネ一本鎗に代わる戦略を打ち出さないのは国益に沿わないし、世界の潮流の変化も等閑視した思考停止というべきだろう。

 ましてや、「再エネの導入スピードが遅いことが問題で、より加速すべし」という暴論が未だにまかり通っている現状は度し難い。電力の安定供給を損ない、エネルギーコストを高騰させることで、ただでさえ低成長で国際競争力の低下に悩むわが国を痛めつける亡国につながる提言と言うべきである。

 
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