2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2022年7月4日

 ノルドストリーム1以外のパイプラインの輸送量も大きく落ち込み、ロシアからの欧州向け天然ガス供給量は、今、前年同期比の約4分の1まで落ちている。ガスプロムの供給停止対象国も広がり続け、6月末の時点でフィンランド、オランダなど12カ国が供給停止、あるいは供給数量カットの対象となっている。欧州のエネルギー危機を深め、ロシアの力を示すことが狙いだろう。

 図-4が欧州主要国と日本の発電における天然ガス依存度を示している。天然ガス供給量の減少は、発電量に影響を与える。

ロシアの供給停止に備える欧州

 日本では天然ガスの備蓄量は2週間から3週間の消費相当量だが、欧州諸国は大規模な天然ガスの備蓄設備を保有しており、冬季に備え備蓄量の積み増しを図っている。ロシアからの供給量の減少を受け、休止していた石炭火力の再開、あるいは稼働率向上により天然ガス消費量を抑制し、冬季に向け天然ガスの備蓄を増やす方針の国もある。

 20年に脱石炭火力を達成していたオーストリアは方針を大きく変更し石炭火力を再開。ドイツは、緊急時に備え石炭の在庫を積み増してしている。

 欧州委員会は、35年までに天然ガスから水素、バイオガスなどに切り替える方針を示しているが、ドイツとオランダは共同で天然ガス田の開発に乗り出し、イタリアも天然ガスの探査、生産再開の方針を示している。欧州諸国は温暖化対策どころではないようだ。

 ロシアからの天然ガス供給減を補うため、欧州連合(EU)に属していないノルウェーはEU向け供給量を増やしているが、増産には限度がある。ロシアからの供給減を大きく補っているのは、米国からの輸出を主体とするLNGだが(図-5)、米国の主要LNG輸出基地の一つで6月初旬爆発事故があり、さらに需給環境は厳しくなってきた。

需給環境が厳しくなる天然ガス

 6月8日米国のLNG輸出量の17%を担い、日本企業も資本参加しているテキサス州のフリーポートLNGターミナルが爆発事故を起こし操業を停止した。米国エネルギー省によると、今年1月から5月の同ターミナルからの輸出量は、600万トンを超えており、うち欧州向けが71%、アジア向けが17%。欧州向けLNG輸出には大きな影響が生じる。

 フリーポートターミナル運営事業者は、部分的操業再開が10月、完全に再開されるのは今年末と発表した。この間に600万トン以上のLNG輸出数量が失われることになる。

 今年1月から4月の米国から欧州向けLNG輸出量は、前年同期比3倍に増加しており、米国からのLNG輸出の74%が欧州向けになっている。アジア向け輸出量は中国向けを中心に大きく落ち込み、対前年比51%減となっている。輸出に占めるシェアも約20%になった。


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