2024年4月23日(火)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年5月28日

 エネルギー価格の高騰に対して、日本ではエネルギー関連の税を引き下げることで乗り切ろうとしている。しかし、これは長期的にはまずい効果をもたらす。なぜならエネルギー価格の高騰は、エネルギーが足りない、あるいは二酸化炭素(CO₂)の排出を抑えて気候変動を抑制しなければならないのに、価格を抑えていたら、これまで通りエネルギーを使って良いというシグナルを送ることになるからだ。

(artursfoto/gettyimages)

 もちろん、エネルギー価格の高騰はウクライナに侵入したロシアの経済制裁のためでもあるのだが、ロシアが侵略を止めない以上は制裁が続き、エネルギー価格の高止まりも続かざるを得ない。エネルギー価格の高騰は一時的なものではないのだから、エネルギー関連税の引き下げで対応するのは誤りである。

エネルギー補助金は当然に財政赤字を拡大する

 エネルギー価格を抑えるためのエネルギー関連税を引き下げているのだが、これは当然に財政赤字を拡大させる。この金額は1.5兆円である(内閣府「コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」(2022年4月26日)」)。

 こういう数字を見ると、財政当局は、財政赤字で大変だというのだが、本当に真剣に財政赤字の拡大を止めようとしているのか筆者は、疑問に思う。

 もちろん、エネルギー価格の上昇で所得が実質的に減少して生活水準が大きく低下する人々には、なんらかの手当てが必要だ。

 エネルギー価格の高騰に対して補助金(あるいは減税)で対応するのは、開発途上国で広範に見られた政策だ。ところが、14~15年にかけてアジア新興諸国は、相次いで燃料補助金を廃止した。

 理由は、エネルギー補助金が非合理だということと、財政赤字を抑制するためだ。インドネシアでは、これによって、予算をインフラ整備に回すことができるようになり、投資環境を改善できたという。

 しかし、18年になってインドネシアやマレーシアで再び燃料補助金が復活した(塚田雄太「アジア新興国で復活する燃料補助金」日本総研アジア・マンスリー 2018年9月号、2018年08月20日)。これは今も続いている。合理的政策を採用するのは極めて難しいことらしい。


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