2024年11月24日(日)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年5月28日

食糧価格には多少はやりようがある

 エネルギー価格が高騰したとき日本にできることはほとんどない。正しい方策は、エネルギー価格の高騰を他の物価に転嫁させることだけである。

 日本では掘れば温泉は出るが、いくら掘っても石油も天然ガスも出て来ない。再生エネルギーはわずかだし、急に増やせるものでもない(安全を確認して原子力の使用を拡大するという手はあるが、その議論は山本隆三氏の論考「繰り返される停電危機 日本はどこまで没落するのか」などにお任せしたい)。

 しかし、全世界の食糧増産には多少は貢献できる。石油や天然ガスが上がって困るのは、車を走らせ電力を大量消費している豊かな国の人々だが、貧しい国で世界の食糧生産が落ち込めば、すぐさま人道危機になってしまう。

 ロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナの小麦生産量は1200万トン減少すると言われている(「ウクライナの小麦生産量、前年比35%減 仏データ分析会社」〔AFP=時事〕)。戦争で作付けが危険な仕事になり、農業機械をロシアが盗み、人手も取られているからだ。ロシアは、ウクライナで人道危機を起こしているだけでなく、全世界でも人道危機を起こしている。

 日本が、この危機を緩和することはできないだろうか。図1は、日本のコメの作付面積、収穫量、10アール(a)当たりの収穫量を示したものである。

 作付面積と収穫量は1960年代末から減少し、10a当たり収穫量は90年代末以降頭打ちとなっている。日本の収穫量は60年代末の1400万トンから800万トン以下へと600万トンも減少している。人々がコメを食べなくなったからだが、コストを下げて輸出することを考えず、ひたすら補助金をつぎ込んでいたからだ。

 小麦が1200万トン減少した時、仮にコメを600万トン増産できても足りないが、なんらかの役には立つだろう。世界では食生活が異なるが、カレーは小麦粉のナンでもコメでも食べることができる。

 もちろん、過去に1400万トン生産していたからと言って現在1400万トンに増産できる訳ではない。しかし、日本の農業機械の稼働率は低い。田植えや収穫期間の長い品種を植える。あるいは田植えを止めて直播にする。収量の多い品種にするなどの方策で増産することはできるはずだ。

 これができれば、世界に貢献できうるし、今後起きうるだろう食料品の物価高への対策にもなる。何よりも、ひたすらつぎ込んだ補助金を削減することができる。


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