ワシントン・ポスト紙は、シリアでは、イスラム原理主義の暫定政権と旧アサド政権派との衝突が始まり、内戦の再燃が懸念されるという、ジム・ジェラティNational Review誌特派員の現地レポート‘The last good days in Syria before a new nightmare began’を掲載している。要旨は次の通り。

シリア情勢は、3月6日に悪化し出した。旧アサド政権派とイスラム原理主義の暫定政権の部隊との衝突が始まり、後者は、明らかに宗派主義に基づく一般市民の虐殺も始めた。
昨年の12月8日、13年間の内戦を生き残ってきたバッシャール・アサド政権が突然崩壊し、HTS(シャーム開放機構)がシャラア氏を暫定大統領とする暫定政権を樹立した。
シャラア氏はユニークな経歴の持ち主だ。2003年に彼はアルカイダに参加したが、捕虜になり米軍のキャンプ・ブッカに拘留された。その後、11年にシリア内戦が始まると、彼はシリアでヌスラ戦線を立ち上げてイスラム国に参加した。しかし、13年に彼は「イスラム国」の指導者バクダッディと衝突し、ヌスラ戦線は「イスラム国」と袂を分かった。
確かにシャラア氏は、西側のメディアに対して「少数派を弾圧するより内戦で疲弊したシリアを復興させようとしている」と発信している。例えば1月には英Economist誌に「これからの5年間で国家を再建し、正義と対話を推進し、国家運営に全ての勢力が参加するだろう」と述べた。
他方、アサド一族は、アラウィ派と呼ばれるイスラム教の少数派に属しているが、アラウィ派、キリスト教徒、その他の少数派は、過激派の過去を持つスンニ派イスラム原理主義政権を恐れる十分な理由がある。
2月末、シリアの様々な勢力が2日間の国民対話集会を開いたが、新政府を樹立するための具体的な指針には触れなかった。3月上旬には、アサド政権崩壊後の緊張を孕みつつも相対的に安定した状況は崩壊し、アラウィ派の根拠地である沿岸のラタキアでイスラム原理主義政権の治安部隊はアサド派の勢力を壊滅させ、戦闘は近隣のホムスとハマに飛び火した。