フィナンシャル・タイムズ紙の1月28日付け解説記事‘Iran rethinks confrontation with Donald Trump’が、「イランは、イスラエルの攻撃を受けて弱体化している。イラン側は弱みを見せたくないが、イスラム革命体制存続のためにトランプ大統領との取引を望んでいる」と指摘している。要旨は次の通り。

イランは、1980年代のイラン・イラク戦争以来で最大の危機を迎え、トランプ大統領の就任前から静かに同大統領に対する姿勢を変えている。つまり、イランは、ここ何年間で最も脆弱となっており、イラン政府関係者は対決を避け、トランプ大統領とのディールを望んでいる。
イラン側が嫌うトランプ大統領の復権は、核開発問題で西側との交渉が土壇場ぎりぎりのタイミング、かつ、イランとその代理勢力との一連の戦闘で勝利したネタニヤフ・イスラエル首相が大胆になり、このイラン側の敗北により中東のパワーバランスが変わっている時に起きた。
イスラエル側はイランへの2回の報復攻撃の結果、イランの防空網の大部分を破壊し、イランの重要な代理勢力であるヒズボラを弱体化させたと主張しているが、その結果、専門家は、イラン側はトランプ大統領を刺激したり、イスラエルや米国と軍事的に衝突したりすることを避けたいと思っていると分析している。
トランプ大統領は、第1期政権でイラン核合意から離脱し、対イラン制裁を再開したが、イランとディールしたがっている可能性がある。彼は、イラン側との外交的解決が可能かどうかを探るために中東問題特使としてウィットコフ氏を任命した。他方、西側外交筋によれば、改革派のペゼシュキアン・イラン大統領は、イラン経済への圧迫を減じるために交渉による問題の解決を望んでいるというシグナルを発している。
もちろん、その様なシグナルが発せられるのは、イランの立場が弱くなり、米国とイスラエルの武力衝突を避けたいという思惑もある。しかし、同時に、この外交筋は、もし、交渉が決裂する場合、イランは西側と衝突するだろうとも警告し、イランのウラン濃縮は兵器級のレベルに近づいており、今こそ言葉ではなく行動が必要だとしている。
イラン国内では改革派がハメネイ最高指導者と革命防衛隊に、これがイスラム革命体制存立の危機を回避する最後の機会だとして交渉するよう圧力を掛けている。しかし、イランの専門家は、イラン側が追い詰められて交渉せざるを得なくなったと見られたくないと思っていると分析している。