2025年3月28日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月21日

イスラエルの2つの攻撃オプション

 イスラエルは自国の安全保障について妥協がなく、かつ、現状をイラン攻撃の好機と考えてもおかしくない。ただし、問題は地続きのガザやレバノンと違い、イスラエルからイランまで千キロ以上ある事だ。

 恐らくイスラエル側は2つのオプションの合わせ技で来るのではないか。一つ目は、既にイラン経済は、今も続く第1期トランプ政権の経済制裁再開で相当疲弊しているが、イスラエルが石油積み出し施設を破壊して全輸出の85.5%を占める石油輸出を止めればイラン経済は崩壊し、生活苦から国民の暴動が起きる可能性が高い。

 もう一つは、イランの少数民族による分離独立運動だ。イランは多民族国家であり、人口の約半分がペルシャ人だが、アゼルバイジャン人、クルド人、アラブ人、バルチスタン人等の多くの少数民族がいる。そして、クルド人、アラブ人、バルチスタン人の間では分離独立運動が絶えず、テロも時々起きている。イスラエルはこれらの少数民族の分離独立運動を武器や資金面で支援することが出来る。

 しかし、40年以上掛けて構築されたイランのイスラム革命体制は強固であり、イスラム革命体制側も相当なダメージを受けるが、最終的には生き残るのではないかと思われる。ただし、生き残ったとしても、しばらくの間はイスラエルに対する脅威とはならないであろうから、イスラエルはそれで満足するかもしれない。

 いずれにせよ、現在、ガザやシリアに国際世論の目が向いているが、中東最大の不安定要因はイスラエルによるイラン攻撃である。

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