米国のトランプ大統領の「パレスチナ自治区ガザから住民を一掃、リゾート開発する」という構想で、一連の費用をペルシャ湾岸諸国に負担させようとしていることに、サウジアラビアを牛耳るムハンマド皇太子が激怒。慌てた大統領が懐柔に躍起になっているようだ。ロシアのプーチン大統領との首脳会談をサウジで開催するとの唐突な発表の裏にはこんな事情があったとみられている。

誇りを逆なで
世界を驚かせたトランプ提案は「強制移住は国際法違反」「民族浄化」などと国際的な反発を招き、ルビオ国務長官らが「移住はガザを再建する間、一時的に離れるという意味だ」と説明。「ガザ所有」に関しても、「米国が再建に責任を持つということだ」と必死に取り繕った。
しかし、当の大統領は側近の釈明を嘲笑うかのように、自ら提案の真意を明らかにしていった。第1に約220万人に上る住民の域外移住は「一時的ではなく、恒久的」であり、「ガザへの帰還は許されない」ということ、第2に同地を「中東のリビエラ」開発のための「大きな不動産用地」と見なしていること、第3に開発費は「中東の金持ち諸国」に出させること。
大統領は住民の帰還を想定していない理由として、「より良い境遇で居住することになるからだ」とし、住民らをエジプトやヨルダンに恒久的に移住させる狙いであることが鮮明になった。「要は不動産投資のためにパレスチナ人に故郷を捨てて出ていけと。戦乱に振り回される人々の苦しみなど歯牙にもかけない金持ちのぼんぼんの発想だろう」(ベイルートの消息筋)。
ガザのパレスチナ住民のほとんどは1948年の第1次中東戦争の際、難民になった約70万人の子孫。パレスチナ人は故郷を追われた時のこの苦境を「ナクバ」(大惨事)と呼び、繰り返されてはならない記憶としてとどめている。彼らにとってトランプ大統領の提案は「第二のナクバ」を意味するものだ。
ベイルート筋などによると、「ガザ所有提案」に関する一連の出来事の中で、トランプ大統領にとって大きな誤算があった。それはサウジのムハンマド皇太子の怒りを買ったということだ。大統領はガザから住民を一掃して、リゾート開発する費用を産油国のサウジやアラブ首長国連邦(UAE)に出させる考えだが、これにムハンマド皇太子がカチンときたという。