2025年3月28日(金)

教養としての中東情勢

2025年2月18日

本当の危機は3月に

 米国とサウジの水面下での思惑が交錯する中、ガザでは2月15日、イスラエルとイスラム組織ハマスによる6回目の身柄交換が行われ、人質3人が解放された。停戦合意の第1段階では33人の人質が解放される予定で、これまでに19人の解放が実現した。

 今回の人質解放をめぐっては、ハマス側が、イスラエルがガザへの人道支援物資の搬入を妨害していると反発、一時は人質解放がストップするとの情報が飛び交った。ネタニヤフ首相はハマスへの攻撃を再開すると警告、トランプ大統領も「15日までに人質全員が解放されなければ、地獄を見ることになる」と脅すなど、戦闘再開の恐れが高まった。

 ハマスが折れたことにより、最悪の事態は回避されたが、米紙によると、イスラエルが人道支援を故意に止めたのは事実のようだ。ハマス側がこれに怒って人質の解放をやめれば、それを口実に攻撃を再開する狙いだったという。第2段階で詰める恒久的な停戦については、交渉が全く進んでいない。

 イスラエル側は停戦交渉の行われるカタールに代表団を送ったが、メンバーはこれまで交渉を担当してきたメンバーではない上、仲介者の意見を聞くにとどめているという。首相は恒久停戦に応じるつもりはなく、人質の全員解放まで「時間稼ぎ」をしているとの見方が強い。

 イスラエルの極右閣僚は停戦合意の第1段階を過ぎた3月に戦闘を再開するよう首相に迫っており、現地では「本当の危機は間もなくやってくる」と悲観論が広がっている。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る