2025年3月27日(木)

プーチンのロシア

2025年2月17日

 米国のドナルド・トランプ大統領がロシアのウクライナ侵略開始丸3年を前にした2月12日、ウラジーミル・プーチン大統領と電話会談し、戦争で「何百万人もの命が失われることを止めたい」と終結に向けて本格的に交渉に乗り出すことを宣言した。第二次トランプ政権初となる直接会談についても近い将来、サウジアラビアで開催する見通しを明かした。

トランプ大統領とプーチン大統領の電話会談を伝える新聞(ロイター/アフロ)

 しかし、ロシアとウクライナの交渉については、2014年の東部ドンバス地域で戦闘停止に向けた「ミンスク合意」が事実上、反故に陥った経緯があり、交渉には紆余曲折の困難さが付きまとう。事実上の交渉ファーストラウンドが始まった段階で、どのような事情が交渉妥結、または決裂の原因になるのかを整理してお伝えしたい。

様々な立場から発せられる発言

 2月14日からはドイツで、世界各国の首脳や閣僚が安全保障をめぐり意見を交わすミュンヘン安全保障会議が開かれ、ウクライナのゼレンスキー大統領も出席した。停戦交渉に向けた主な焦点は4つだ。①ウクライナの安全保障の形がどうなるか②ロシアに奪われたウクライナの領土奪還は可能なのか?③停戦監視システムはどうなるのか?④プーチン大統領が要求する対露制裁解除がどうなるのか?――だ。

 ロシア、ウクライナ、米国、欧州のそれぞれの交渉が本格化し、注目すべき様々な主要人物の言葉が飛び交っているが、これは前途多難だからこそ、それぞれの立場の希望的観測や要望が含まれていることに注意しなくてはならない。その中には相手国を牽制する「かまし」や「条件吊り上げ的な要望」「脅し」さえある。

 戦争終結に向けた主要プレーヤーは多岐にわたる。根回しも含め交渉の過程における詳細なやり取りが表にはならないだろう。たとえ一部が切り取られて公になったとしても、それは、ロシア、ウクライナ、米国、欧州のそれぞれの立場を有利に持ち込もうとする力学が働いた結果だろう。ハンガリーやスロバキアなどの政治情勢を見ると、欧州諸国も決して一枚岩ではない。2月末に開催されるドイツ総選挙の結果も交渉の流れに影響を与えるだろう。

 トランプ氏は就任直前、戦争終結に「6カ月はほしい」と語った。さらに、ロシア・ウクライナ特使に任命したキース・ケロッグ退役陸軍中将には「100日以内」との注文を付けたという。

 それまで、ジャブの応酬は続く。決裂もありうる。その都度、値踏みはできるが、最終形は違う形になる可能性が十分にある。トランプ政権がメインプレーヤーになっていることがその状況に拍車をかけている。野心的で強引な言葉が発せられても、冷静に判断すべきと考える。


新着記事

»もっと見る