専門家によれば、イスラエルの攻撃でイランとその代理勢力がダメージを被った結果、イランの域内における影響力が減じ、イラン側はトランプ大統領がイランに対する「最大限の圧力」を一層強めたり、イスラエルにこれ以上攻撃されたりするのを避けるためにトランプ大統領と取引をしたいと考えている。
英国王立国際問題研究所のヴァキール中東部長は、「イランが何かより大きな譲歩をしない限り、トランプ政権が支援するイスラエルの3回目の攻撃があり得る。これは、イスラム革命体制の存続、つまり、イラン経済、イスラム革命体制とその正統性の回復が掛かっている」と述べている。
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イランの交渉に向けた動き
ヒズボラの弱体化、ガザの停戦、シリアの体制崩壊と立て続けに大事件が起き、これらの出来事の結果イランの域内における影響力が低下し、しかも、再度、イスラエルに攻撃されれば、イスラム革命体制の崩壊を招くかもしれない危機的状況にあるため、イランはトランプ大統領との取引を望んでいる、という上記の解説記事の分析には同意できる。
2024年11月、(イラン側は否定しているが)イランの国連大使がトランプ大統領の側近と見なされているイーロン・マスク氏と会談したと報じられ、また12月23日、共同通信は、イラン政府関係者が日本にトランプ大統領との橋渡しを頼むことを検討していると報じた。これらのことは、イランが真剣にトランプ大統領との取引を望んでいることを示唆している。イラン側はトランプ大統領の要請による19年の故安倍晋三元首相のイラン訪問の前例から日本に要請する可能性を検討したのかも知れない。
しかし、問題はイスラエルだ。昨年の4月にイスラエルがダマスカスのイラン大使館を空爆して以来、イスラエル側は、ハマス、ヒズボラ、フーシー派といった個々の代理勢力に大きなダメージを与えても、その黒幕のイランのイスラム革命体制が存続する限り、根本的にイスラエルへの脅威が無くならないと考え、イスラム革命体制自体の崩壊を視野に入れている可能性があり、懸念される。その場合、トランプ大統領もイスラエルを止めるのは困難だろう。