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World Energy Watch

2022年7月26日

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堀井伸浩 (ほりい・のぶひろ)

九州大学経済学研究院准教授

慶應義塾大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所に入所。中国清華大学技術・経済エネルギーシステム分析研究院客員研究員、日本貿易振興機構アジア経済研究所副主任研究員などを経て現職。専門は産業経済論(中国のエネルギー・環境問題)。

 岸田文雄首相は7月14日夕刻に開いた記者会見で、「原発を冬に備えて最大9基稼働する」と発表した。発表当初は新規に9基の再稼働に踏み切るのか、検討を重ねてばかりでひとつも実行しないと揶揄されてきた岸田首相が遂に覚醒したか、と大いに期待されたが、その後ほどなくして、現在運転中の5基を含め、今後2022年中に既に再稼働が決まっている4基が予定通り稼働されるということを指しているということが分かった。

福島第一・第二原発を廃炉対象にしたいま、東京電力管内の原発は柏崎刈羽原発のみ。今回再稼働対象に含まれておらず、需給逼迫解消への道筋は立たない(Sugarless Shogun/gettyimages)

 要するに、既に決まっている再稼働を予定通り進めますと表明しただけに過ぎず、拍子抜けと言わざるを得ない。またこれから再稼働される4基のうち3基が関西電力、1基が九州電力であり、冬の停電懸念が高まっている関東圏の電力需給の緩和には直接貢献しない。経済産業省も岸田首相の記者会見での公表の意味をつかみかねているとの報道もあった。

 しかしひょっとすると(期待を込めて)、これは世論の反応を見る岸田首相の観測気球であり、今後新たな原発の再稼働が進む可能性があるのではないか。今回、「原発再稼働」というワードに対し、反原発派と再エネ推進派は反発したものの少数に過ぎず、全体として世論は「安全性を確認できた原発の再稼働」に対する賛意を示したという反応であったように見える。

 岸田首相は「出来る限り多くの原発」の稼働を進めると言及し、その後に「今冬に最大9基」と述べており、言外に春以降に更に再稼働の原発を増やす可能性を示唆したと考えることはできる。今冬には手続き的に間に合わないと言われているが、迅速に他の原発についても再稼働を急ぐべく岸田首相には政治力を発揮して欲しい。

再エネ推進派が原発再稼働を反対するワケ

 ところで原発の再稼働に対して再エネ推進派は何故反発するのだろうか。反原発の人々がそのまま横滑りで再エネ推進をしているという面は恐らくあるだろう。しかしより重要な点として、原発と再エネは共食いの関係にあることが考えられる。

 原発と再エネの共通点はともに柔軟に出力調整できないという点である。再エネは周知の通り、自然条件任せで目まぐるしく出力が変動する。太陽光は夜になると出力がゼロになるとよく批判される。もちろんそれも問題ではあるが、夜間はむしろ出力ゼロで安定しているというふうにも言える。

 より問題なのは、日中に秒刻み、分刻みで出力が変動し、全く安定しないことである。再エネの勝手気ままな出力変動をカバーするために、火力発電が採算性の悪い運転を強いられている。

 他方、原発は再エネとは異なり、出力は安定しており、ベースロードという形で通常の場合、一定出力で運転される。原発は建設費用などの固定費用が巨額である一方、燃料費がほとんどかからないため、出力を出来るだけ高く維持して運転することが効率的である。福島原発の過酷事故以降、安全対策で原発の発電コストは割高になったと言われるが、新設はともかく、既に巨額の建設費用を投じた後の既設原発の稼働に必要な追加コスト(限界費用)は依然として安価である。

 再エネ推進派は原発の高出力での運転が再エネ拡大の障害となっていると目の敵にしてきた。確かに一理あり、原発がベースロードで運転されるのは経済効率性の面から正しいわけだが、そもそも原発は容易に出力調整できないという理由があるためでもある。

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