ロシアのウクライナ軍事侵攻以来、天然資源の供給に限界が見えてきた欧州で、8月10日から省エネ対策が始まった。猛暑が続く中、各都市の商店や飲食店をはじめ、ホテルや空港などでも、エネルギー資源節約の準備として、さまざまな規制がかかるようになった。現場では、どのような声が上がっているのか。
EU各国で省エネ対策始まる
欧州連合(EU)は7月、エネルギー相会議を行い、ロシアからの天然ガスが途絶した場合の対策について話し合った。その結果、今月から来年3月末まで、加盟国が自主的にガスの使用量を過去5年間の平均値から15%削減することで合意した。
だが、ロシア産天然ガスの依存度は、各国それぞれ異なる。調査会社「スタティスタ」によると、オーストリア(86%)、ドイツ(49%)、イタリア(38%)などは依存度が高いことが分かる。だが、複数の調査会社によると、スペインとポルトガルは10%に満たないようだ。
EUの合意を受け、スペインとポルトガル両国は、15%削減に反対の声を上げた。他国と比較し、ロシア産ガスの依存度が低い両国は、最終的に7%まで引き下げることで決着がついた。
そこで、EUでもっとも早く省エネ対策に乗り出した国は、スペインだった。8月10日以降、商業施設や飲食店において、夏場は冷房を27度、冬場は暖房を19度に設定することを法律で義務付けた。ただし、病院、教育施設、スポーツジム、スーパー、工場、飲食店のキッチンなどには、例外措置を与えている。
現在は様子見だが、規則に違反する場合は、最高6万ユーロ(約822万円)の罰金が科される見通しだ。9月30日からは、節電の強化に向け、商業施設などは室内温度を逃さない自動ドアなどのシステムを導入しなければならない。
空調以外にも、町中のライトアップやショーウィンドーの電気を切る対策も始まっており、首都マドリードのアユソ州知事をはじめとする野党は、この省エネ対策を猛烈に批判。同州知事は「この法律は、商業施設と観光と治安に反するものだ」とツイッター上で叩き、「憲法裁判所に訴える」とのコメントまで発表した。
ドイツでは、省エネ対策を勧告レベルに留めているが、いずれは法制化すべきとの声もある。ショルツ首相は、オフィスビルなどの廊下や会議室のように人が停滞しない空間での冷暖房停止を呼びかけている。ベルリンでは、多くのビルやモニュメントの消灯も始まっているようだ。