フランスでは、人口80万人以下の町は、午前1時から6時までの5時間、街頭を消す方針になった。また、商業施設が冷暖房を使用する際には、扉の閉鎖と室内温度設定を26度(夏場)と19度(冬場)に義務付けた。違反すれば、罰金600ユーロ(約8万2200円)が科せられることになる。
イタリアは、EUが提示する15%削減に不満を示し、具体策が定まっていない。チンゴラーニ環境相は、ガスの見通しが「来年3月までは問題ない」との観測を示唆。スペインやポルトガル同様、7%削減で合意できるよう交渉中だ。
「27度では客が来ない」
では、省エネ対策がすでに施行されたスペインで、人々はどのような反応を示しているのか。北東部バルセロナの町中を訪ねてみた。
市内中心の人気バル「エストゥディアンティル」のテラスは、大勢の客で埋まっていた。だが、店内には従業員しかいない。店主のモンセ・ボレットさん(46歳)は、「店内はとても暑いので、27度設定では客は来ない。幸いテラスがあるので助かっている」と語った。
アイスクリーム屋「オルチャテリア・ラ・バレンシアナ」の店主、セベリノ・コルテスさん(62歳)は、省エネ対策が始まるまでは室内温度を21度に設定していた。「テラスがないので、27度では商売に響いてしまう。猛暑で冷蔵器機の消費量が大きい上、電気代高騰のせいで、この数カ月、電気代の支払いが3倍に跳ね上がっている」と不満を口にした。
市内中心の映画館に勤務する女性も、上映後に出てきた数人の客から、「映画を観ている間、とても暑かった」という苦情があったと話していた。
節電を例外的に許可されているスポーツジムは、熱中症や脱水症状を防ぐため、温度設定は自由だという。夜10時、バルセロナ市内にある「ビバジム」に入ると、湿った30度の外気から解放される涼しさだった。
トレーナーのエリック・ゴンサレスさん(23歳)は、「ジムで27度なんて無理ですね」と苦笑。とはいえ、「ウクライナ問題とは関係なく、ヨーロッパはいずれ団結して省エネに取り組む必要があったと思う」と現実的だった。
バルセロナでは、猛暑が続く中での省エネ対策は、ビジネスへの影響以外にも、身体的な負担が大きく、25度への設定に変更する模様だ。いずれにしても、全員に共通していることは、「それでも省エネをしなくてはならない」という確固たる意思の現れがあることだった。