2024年4月16日(火)

World Energy Watch

2023年5月10日

米国で高まる反ESG

 米国では、共和党が知事あるいは州議会で主導権を持つ州での反ESGの動きが顕著になっている。テキサス州、カンザス州など少なくとも8州が、州の公務員年金基金の投資、あるいは州政府の契約に際しESGの基準に配慮することを制限、禁止する州法を導入している。

 今年3月には、ESGに配慮することは利潤の最大化につながらないとする共和党知事19人が、州レベルの投資に際しESG基準へ配慮をしないとする声明を発表している。

 反ESGの考えは、50年以上前からの企業の社会的責任、企業の目的に関する議論に端を発しており目新しいものではない。簡単に言えば、「企業の社会的責任は一つだけ。法を遵守し収益を上げ、株主に利益を還元すること。利益を受け取った株主が社会貢献を考えれば良い」と主張するノーベル経済学賞を受けたミルトン・フリードマンに代表される考えにつながる。

 一方、ピーター・ドラッカーらは「企業の目的は事業、その製品、サービスを通し社会に貢献すること。利益は目的ではないが企業の存続のため必要」と唱えている。すなわち、製品あるいはサービスを通し社会に貢献するためには、企業が継続する必要があり、長期的な観点での利益が必要だ。企業の利害関係者と良好な関係を保ち、社会に貢献することで企業は生き残り、継続することができる。

 マイケル E. ポーターとマーク R. クラマーは、さらに考えを発展させ経済価値を創造しながら社会的ニーズに対応する「共通価値の戦略」を打ち出した。社会のニーズに取り組むことが結果的に経済価値の創造につながるとの考えだ。

 現在、米証券取引委員会(SEC)は、気候変動への取組に関し企業が開示すべき内容を検討している。開示についても共和党主流派は反対だが、共和党支持者の中でも賛成の意見もある。

 最近では環境NGOなどが企業に対し温暖化対策、取締役人事などに関し過剰とも思える要求を突きつけるようになった。企業もどこまで温暖化対策に踏み込めば良いのか限度が見えない状態だ。そうであれば、SECが要求する開示内容に企業が応えるだけのほうが、環境NGOなどの過剰な要求に応えるよりも簡単という側面がある。

 いずれにせよ、反ESGは企業の目的は利益だけとし、その最大化を図る考えだ。ESGは社会に貢献する企業の生き残りのため利益が必要との姿勢である。長期的にどちらが大きな利益を生むか分からない。

 ただし、ESGを掲げる米国企業が日本企業と大きく異なる点がある。政府の目標に関する考え方だ。

したたかな米国企業のESG

 今年4月北米に出張し、経済団体、エネルギー関係の業界団体、エネルギー関連企業と面談した。ESGも話題になったが、米国関係者から現実的なコメントを聞かされることになった。

 米国バイデン政権は35年までに電源からの二酸化炭素(CO2)排出量ゼロを目標としているが、面談したエネルギー産業の関係者はESGの目標としては考えないと断言した。「35年ゼロはバイデン政権の目標で企業はあずかり知らないし、大きな技術革新がない限り達成することは不可能。できないので目標にしない」と明確だった。

 また、再生可能エネルギーの導入が米国でも増加しているが、これも温暖化目標とは関係ないとの答えだった。要は、「連邦政府の投資税額控除、生産税額控除あるいは州政府の補助制度などがあり、経済的にメリットがあるから増えているので、CO2削減を目標にして取り組んでいることはない」と、これも明快だった。


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